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世界銀行2018「クライメート・スマート・アグリカルチャー(CSA)概念の実践化: アフリカ・アジア・ラテンアメリカにおけるCSA国別プロファイルからの考察 [Bringing the Concept of Climate-Smart Agriculture to Life: Insights from CSA Country Profiles Across Africa, Asia, and Latin America].」概要

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極端な気象イベントの頻発による作物・家畜への甚大な被害と食料生産への壊滅的影響を通じ、世界中で気候変動による農業への負のインパクトが報告されるようになっている。同時に、農業は温室効果ガス(GHG)総排出量の19-20%を占め、気候変動の主要な原因の一つでもある。クライメート・スマート・アグリカルチャー(CSA)は、農業開発と気候変動対応の統合を通じ、持続的な農業生産性の改善、強靭性の強化、GHG排出削減、を同時に目指すアプローチである。本報告書は、アフリカ・アジア・ラテンアメリカ地域約30か国という異なる地域・農業システムから300近いCSAプロファイルを参照し、CSA概念の実践化において重要な要因について分析した。本書の主要な結論は以下の通りである。

  • クライメート・スマートな技術は、各地域の状況に応じて極めて多様である。
  • その一方、33か国の専門家からクライメート・スマートであると認定された全CSAの50%近くが、水資源管理(water management)、ストレス耐性作物導入(crop tolerance to stress)、混作(intercropping)、有機肥料(organic inputs)、保全農業(conservation agriculture)、に関するものであった。
  • クライメート・スマートと認定された技術のほとんどが、生産性・気候変動適応・緩和の三つを同時に満たすことのできる、トリプル・ウイン(triple-wins)潜在性を秘めている。
  • 全対象地域において、農民・専門家・政策決定者に対するトレーニングと情報不足がCSA採用の最大の制約として指摘された。
  • 万能薬的なCSAは存在せず、圃場レベルにとどまらず、セクター間の調整に配慮した場合に効果が最大化されることが示唆された。

より詳しい内容に関しては、以下のサイトを通じ報告書原文を参照のこと

Sova, C. A., G. Grosjean, T. Baedeker, T. N. Nguyen, M. Wallner, A. Jarvis, A. Nowak, C. Corner-Dolloff, E. Girvetz, P. Laderach, and Lizarazo. M. 2018. “Bringing the Concept of Climate-Smart Agriculture to Life: Insights from CSA Country Profiles Across Africa, Asia, and Latin America.” World Bank, and the International Centre for Tropical Agriculture, Washington, DC.
http://documents.worldbank.org/curated/en/917051543938012931/pdf/132672-WP-P168692-PUBLIC-4-12-2018-12-27-47-CSAInsightsfromCSAProfiles.pdf

なお、概要に関する本翻訳は、世界銀行から公式に承認を受けたものではなく、翻訳上の誤りなどの責任は文責にある。

(文責:研究コーディネーター  飯山みゆき)

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