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IRRI他主催セミナー「Can mechanization bridge the way to sustainable rice production?」に参加

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 2017年3月16日に、バンコクで開催されたアジア農業機械展示会(AGRI TECHNICA ASIA)で、IRRI、BRIA、giz、DLGが主催したセミナー「Can mechanization bridge the way to sustainable rice production?」に参加しました。その概要をお知らせします。  

  基調講演:アジアでは、農業労働者不足が問題となっており、機械化が進み、民間の進出も進んでいる。本セミナーでは、アジアの稲作における機械化の導入状況、技術開発、解決すべき課題を報告する。稲生産における機械化は整地、播種・田植、除草、病害虫防除、収穫、稲藁処理、収穫後の乾燥の全ての過程で導入される。我々は持続的な米生産を目指しており、それには気候変動、バリューチェーンが関係するため、これについても報告する。

 整地、播種・田植セッション:レーザーレベリングをカンボジア、ベトナムで導入したところ、均平度向上により生産量が増加したが、機械の修理、企業に利益が少ないことが課題であることがわかった。移植機の導入では育苗が課題であること、コントラクトが必要であることが明らかとなった。不耕起播種における稲藁残渣への対応技術、湛水条件での直播技術について報告があった。

 気候変動・節水技術セッション:気候変動による気温上昇は開花受粉に影響を与えるが、その対応として早朝開花の品種を開発した。2016年のベトナムでの乾燥・塩害の被害は甚大で、60万haで収穫ができなかった。ICTを活用して状況把握を行った。稲藁は焼却や鋤込みより持ち出して利用する方がGHG発生量が抑制される。稲藁収集機械の紹介があった。また、節水技術であるAWDの実施において、ICTを活用した技術が紹介された。

 栽培管理セッション:施肥や農薬散布に機械を活用することにより、効率が上がる。ICTを活用して圃場や農家の状況を確認し、適切な施肥や播種などの技術指導する稲栽培指導員(Rice Crop Manager)の設置を行っている。持続型米バリューチェーン(Sustainable Rice Value Chain)構築が必要である。また、稲に対する病気、虫の被害をまとめた報告があった。

 収穫・保管セッション:収穫作業の労働力、コスト、収穫損失が人手、脱穀機導入、コンバイン導入で比較され、機械化が進むにつれ、これらが削減、低減されることが認められた。機械導入の課題としては、小農、小さい圃場サイズ、湿った圃場、圃場への到達困難性、貧弱な支援体制が挙げられた。ベトナム、カンボジアでのコンバイン普及の状況が説明された。コンバインの課題としては、資金、硬盤、さらなる適応技術、収穫損失が挙げられた。今後は乾燥機導入が必要になる。収穫した籾の冷却保管の技術紹介があった。また、稲藁収集、稲藁ボイラー、バイオガスの事例が紹介された。

 市場セッション:米バリューチェーンの解説があり、米の価格に対する消費者の反応として、GAPやトレーサビリティの説明があると、高い価格を受け入れるとの報告があった。  本セミナーに参加して、東南アジアの稲作では、整地から保管まで全ての過程で機械化が進みつつあり、アジアに合った機械の開発が行われているのがわかり、興味深かった。機械化が進むと作業体系や経営が変わり、機械の販売、修理等の新たな産業が興る。また、機械化に合わせた圃場整備、品種開発、栽培・防除技術等の研究が必要になると思われた。

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