国立研究開発法人 国際農林水産業研究センター | JIRCAS

サイエンスQの出前授業 : 「育てる漁業」の現在(いま)・過去(かこ)・未来(みらい)

2017-01-10

はじめに~生徒達の目線に立った授業を目指して

サイエンスQは、筑波研究学園都市交流協議会が主催する、研究機関の研究員が学校を訪問して小・中学生の科学技術に関する疑問に答えるイベントです。このたび、水産領域の杉田毅主任研究員が講師に選ばれ、平成28年10月11日に土浦市立乙戸小学校を訪問し、5年生の2クラス70名を対象に「育てる漁業」の現在(いま)・過去(かこ)・未来(みらい)と題して出前授業を行いました。担任の先生方と実施した打ち合わせにおいて、授業は教科書的なものでなく講師自身の考えが伝わる授業にして欲しいこと、可能であれば飼料原料など見て触れるものを展示して生徒達の記憶に残る授業にして欲しいとの要望をいただきました。要望に応えるため、可能な限り5年生の目線に立ってプレゼンテーション資料を作成しました。

授業に持参したもの

授業当日、展示用に浮遊性の異なる飼料と魚粉、大豆油粕、コーン粕(=コーングルテンミール)、チキンミール(=家禽加工残滓)、フェザーミール、乾燥ハエ幼虫(=マゴットミール)、オキアミミールといった飼料原料を持参しました。浮遊性の異なる飼料については、水を入れたビーカーに実際に両飼料を入れ浮き沈みを確認してもらうとともに、エビなどの水底付近に生息する動物には沈む飼料が、そうでないブリやマダイなどには浮く飼料が適しており、浮くエサは残餌を回収しやすいため適正給餌量を把握しやすく環境にも優しいなどその用途と特徴について説明しました。各種飼料原料は生徒達が休み時間に見たり触れたり臭ったりしており、「チキンミールやフェザーミールは臭かったが、オキアミミールはかっぱえびせんのような美味しそうな匂いがした」など感想を聞かせてくれました。また、クラスで飼育してもらえればとJIRCAS近辺の田んぼの用水路で採取したスジエビ(当日は川エビと言っていましたが、正式名はスジエビです)と稚アメリカザリガニも持参しましたが、担任の先生によると、生徒達は非常に楽しみにしていたらしく、既に水槽の準備までしていたとのことでした。生き物を飼育する楽しさと難しさを知ることにより、生命の大切さを感じてもらえればと思います。

浮遊性の異なる飼料

浮く飼料は金魚用、沈む飼料はエビ用です。

様々な飼料原料

左側から、魚粉、大豆油粕、コーン粕(=コーングルテンミール)、チキンミール(=家禽加工残滓)、フェザーミール、オキアミミール、乾燥ハエ幼虫(=マゴットミール)。養殖用飼料はこれらタンパク質に脂質、糖質、ビタミン、ミネラルを混ぜ合わせて作られています。現在、魚粉を可能な限り削減する飼料の開発が求められています。

授業の詳細

授業はJIRCASの職務内容に関する説明、自身の水産との馴れ初めに始まり、日本の水産業の歴史と現状、養殖業の意義と現在抱える様々な問題について説明しました。生徒達が最も驚いていたのが、「1kgのマグロを50kgの出荷サイズに成長させるのにイワシ、アジ、サバなどが700kgも必要であり、これは日本人約14人が1年間に食べる魚介類の量」という話でした。養殖の成り立ちは“獲る漁業”から“作り育てる漁業”への変換であったにも関わらず、マグロの様に魚で魚を作る養殖では本末転倒であるので、未来に向けてその解決策を紹介するとともにその進行状況を説明しました。授業は5年生の目線に立って、様々な質問を投げかけながら生徒達との会話形式で進行しました。生徒達の授業に対する集中力も凄いものがあり、遠慮なく活発な質問・意見を投げかけてくれました。幾つか想定外かつ突拍子のない質問で自身の専門外な質問もあり、恥ずかしながら答えられない部分もありました。授業後、班ごとでの授業メモを見せてもらいましたが、想像以上にしっかりメモされているので驚かされました。授業終了時には生徒達ともすっかり仲良しになれ、自身としても凄く良い経験が出来ました。

授業の様子1

飼料原料について説明している様子。生徒達の集中力に押されてやや緊張気味です。

授業の様子2

生徒達の目線が釘付けで、凄い集中力を感じました。

生徒達の授業メモ

授業内容だけでなく、魚に関する雑談まで詳細にメモしていて驚きました。