セミナー「石垣の資源循環を進める農業研究最前線」Q&A

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2023-04-12

セミナー「石垣の資源循環を進める農業研究最前線」
2022年10月26日(水)、石垣市民会館においてセミナーを開催し、会場参加、オンライン参加合わせて88人の方にご参加いただきました。
ご参加の皆様には、質問票への記入という手間にもかかわらず、多くのご意見、ご質問をお寄せくださり、ありがとうございました。
いただいたご質問への回答を、以下に掲載いたします。また、いただいたご意見についてはセミナー主催者、事務局で共有し、より社会に貢献できる研究実施を目指していきます。

窒素循環に関するご質問・・・・回答:江口定夫 農研機構農業環境研究部門主席研究員

質問 食品による環境負荷について、カロリー表示のように食品表示できますか?

回答 食品ごとの生産~消費過程で環境中に排出される反応性窒素の総量は、窒素フットプリントという指標値を使うことで、定量的に(例えば単位重量当たりで)表すことが出来ます。また、窒素以外の環境負荷の指標としては、CO2排出量を表すカーボンフットプリント、水資源の使用量を表す水フットプリントなどがあります。これら3つの指標値に基づく総合評価により、星の数(星1つ~3つ)を食品に表示するといった試みが行われている大学(米国)もあるようですので、日本でもそのような取り組みを進めたいと考えています。

質問 反応性窒素が多いとどのような環境負荷になるのですか?

回答 地球上における反応性窒素の増大は、次のような5つの面で、負の環境影響があります。①水圏では、硝酸態窒素による地下水・公共用水域の汚染、閉鎖性水域の富栄養化など、②大気圏では、一酸化二窒素によるオゾン層の破壊、アンモニアや窒素酸化物(NOx)などに起因する酸性雨による森林の衰退、PM2.5(のうち硝酸塩、アンモニウム塩などの窒素化合物)による人の健康被害など、③土壌圏では、窒素肥料や堆肥の施用による土壌の酸性化、④温室効果ガスについては、一酸化二窒素や一酸化窒素の排出、⑤生態系については、窒素負荷による生物多様性や生態系サービスの損失など。

質問 牛フン堆肥のN、P、Kは、wet-%で2~5%程度あるのでしょうか?有機炭素と水分を含めて100%でしょうか?

回答 今回の発表スライドでは、肉用牛の牛糞堆肥の平均的な値(日本土壌協会、2015)として、乾物重当りで、N-P2O5-K2O = 2.2%-2.6%-2.8%という数値を示しました。また、乾物重当りの全炭素濃度は、41.8%です。また、牛糞堆肥の平均的な水分量は約50%(日本土壌協会、2015)とされているため、N-P2O5-K2O濃度や全炭素濃度を湿重当りに換算すると、上記の約半分の値になります。

出典 日本土壌協会(2015)有機農業の基礎知識[土づくりと施肥管理]

 

施肥方法に関するご質問・・・・回答:細川理恵 沖縄県農業研究センター主任研究員

質問 なぜ、化学肥料の利用が主流になっているのですか?

回答 肥料の大切な役割は、作物が必要とする養分を、必要な時期に、必要なところに必要な量だけ、バランス良く望ましい形態で与えることです。 化学肥料は、養分の量やバランス、効果の出る時期もはっきりしており、足りない養分を確実に補うことができます。一方、堆肥や有機質資材は成分量やバランスにばらつきがあります。同じ牛ふん堆肥であっても、堆積期間や堆積時の温度、副資材の種類により成分が大きく異なります。また、化学肥料にくらべて効果が出るまでに時間がかかる資材が多いです。さらに堆肥は一定の重さ当たりの養分含有量が化学肥料と比較し少ないため、同じ養分量を入れようとすると、化学肥料の数十倍の量を入れる必要があり、輸送や散布にコストがかかります。 以上のことから、化学肥料が主流であると考えられます。

質問 収量による評価だけでなく、有機肥料の散布にかかる人件費等を含めた評価は可能ですか?

回答 地域ごと、島ごとで有機質資材の価格、運搬費等も入れて評価することは可能だと考えられます。

質問 堆肥熟度の指標は何ですか?

回答 特別な機械を必要としない方法では、原田(1983)の現地における腐熟度判定基準があります。下の表の①~⑧の点数を合計し、未熟(30点以下)、中熟(31~80点)、完熟(81点以上)となります。

黄~黄褐色(2)、褐色(5)、黒褐色~黒色(10)
形状 現物の形状をとどめる(2)、かなりくずれる(5)、ほとんど認めない(10)
臭気 強い糞尿臭(2)、弱い糞尿臭(5)、堆肥臭(10)
水分 70%以上:強く握ると指の間からしたたる(2)
60%前後:強く握ると手のひらにかなりつく(5)
50%前後:強く握っても手のひらにあまりつかない(10)
堆積中の最高温度 50℃以下(2)、50~60℃(10)、60~70℃(15)、70℃以上(20)
堆積期間 家畜ふんだけ 20日以内(5)、20日~2ヶ月(10)、2ヶ月以上(20)
作物残渣等との混合物 20日以内(5)、20日~3ヶ月(10)、3ヶ月以上(20)
木質物との混合物 20日以内(5)、20日~6ヶ月(10)、6ヶ月以上(20)
切り返し回数 2回以下(2)、3~6回(5)、7回以上(10)
強制通気 なし(0)、あり(10)

出典 原田靖生(1983)家畜ふん堆肥の腐熟度についての考え方

 

サトウキビ栽培に関するご質問・・・・回答:寺島義文 国際農研主任研究員

質問 フィルターケーキやバガスは、8t/10aを目安としているのでしょうか?

回答 石垣市では20t/10a程度が圃場に施用されていますが、海外では8t/10a程度の施用でも効果があることが報告されています。フィルターケーキやバガス灰は発生量が限られることから、できるだけ多くの圃場に施用するために、施用量を減らせないかと考えています。現在8t/10a程度施用した試験を実施していますので、今後、実施中の試験結果も踏まえつつ適切な施用量を提案していく計画です。 

質問 サトウキビの根っこは何mまで伸びますか?

回答 サトウキビは作物の中でも根が深くまで伸びることが知られています。日本でサトウキビの根の深さを調べた事例はないと思われますが、海外では、3m程度の深さまで根が伸びていた例が報告されています。 

質問 フィルターケーキは現在どのように処分されていますか?

回答  フィルターケーキは、サトウキビが土壌から吸収した肥料成分が入っていることから、日本においても海外においても、肥料としてサトウキビ圃場にすべて還元されています。 一方で、フィルターケーキの発生量は限られるため、できるだけたくさんの圃場に施用するために、最適な施用量を明らかにすることが必要です。 現在、国際農研では最適な施用量を明らかにするための試験を実施しています。

 

 

土壌・ミミズに関するご質問・・・・回答:荒井見和 国際農研研究員

質問 バイオ炭の施肥によりミミズの種が多様化しますか?

回答 バイオ炭を施用した際のミミズの種に関する研究が少なく、十分な知見が得られていません。バイオ燃料としてススキを生産しているプランテーションにバイオ炭を添加した実験を行った研究では、バイオ炭の施容量とともにミミズの種の豊富さは減少する傾向にあったと報告されています。バイオ炭施用に対するミミズの反応は種または生活型(生息層位、生活史、食性などによってわけられます)によって異なる可能性があります。バイオ炭の添加によってミミズの餌資源、土壌水分、土壌pHが変わり、バイオ炭の添加が個々のミミズの種に与える直接的・間接的な影響が生じた結果だと考えられます。

質問 たくさんの外来ミミズは、かつて土壌と共に輸入されたということですか?

回答 ミミズが侵入する経路として、土壌を含む園芸用などのポット苗や堆肥などの農業用資材にミミズの卵胞が混入しているなどの可能性が考えられます。そこからどのように生息域が拡大するか十分に明らかにされていませんが、ミミズに限らず外来種の侵入はここ数年で生じたことではなく、人や物の往来や土地利用転換が生じた頃から徐々に始まっていたと推測されます。

質問 炭素をより多く土にたくわえる方法にはどんなものがありますか?

回答 有機物(植物残さ、堆肥など)を還元する、被覆作物を栽培する、輪作を行う、不耕起や省耕起などの管理を行った際に、土壌中の炭素が増加することが報告されています。さらに、このような管理を継続していくことが効果的です。

質問 栽培期間中に使用する農薬(除草剤、殺虫剤など)のミミズに与える影響はありませんか?

回答 サトウキビ栽培における農薬に対するミミズの反応を調べた研究はほとんどないため、サトウキビ栽培に限らず農薬が使用された農地や草地などの研究結果の知見について述べます。除草剤や殺虫剤のうちミミズの繁殖や生存に影響を及ぼすものもありますが、農薬の種類によってその影響が異なることが明らかにされています。除草剤を使用するとミミズの生息密度や現存量が減少することもあるようですが、ミミズの繁殖や生存に直接影響を与えるのかは十分にわかっていません。一方、殺虫剤の使用はミミズの繁殖や生存に悪影響を与える可能性があります。実験室で実際に使用されている濃度条件でミミズの成長を調べた結果、ミミズの成長が遅くなったことが報告されています。

 

講演内容に対するご意見
  • キビはC、H、Oしか島外に排出していないのであれば、理想的な循環モデルになり得ると思う。
  • とても興味深い。地球のN循環がとても危険な状況にあることを、もっとわかりやすく説明してもらいたい。
社会実装に関するご意見
  • 環境負荷について、定性的でも良いので食品表示できると良い。
  • キビ副産物を安く畑に戻す(キビ畑のみでなくとも)プロジェクトを、島をあげて行ってほしい。
研究に対するご意見
  • 未利用資源の活用を通じた化学肥料の低減は必要だが、さとうきびの副産物などを大量に散布するには、機械化などの技術が必要。実際に使える技術になるまでを見据えた研究をして欲しい。
  • 川上から川下までを含めたフードシステムの構築をするとともに、有機肥料を活用したらコスト高になることを消費者にも理解してもらえる研究をしてもらいたい。
  • 有機物施用の必要性は農家さん知っているので、生きもの(ミミズ)が収量に与える影響の研究成果があがると、よいと思う。
  • ミミズ種と作物の相性があると面白い。

 

開催報告(和文)
開催報告(和).pdf2.63 MB
開催報告(英文)
開催報告(英).pdf2.55 MB

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