マダガスカルで陸稲の新品種をリリース
―養分欠乏下で高い生産性を示す陸稲品種「Mavitrika」―
令和6年4月18日
国際農研
マダガスカル国立農村開発応用研究センター
マダガスカルで陸稲の新品種をリリース
―養分欠乏下で高い生産性を示す陸稲品種「Mavitrika」―
ポイント
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概要
国際農研は、マダガスカル国立農村開発応用研究センター(FOFIFA)及びアフリカ稲センター(AfricaRice)と共同で、新たな陸稲品種を開発しました。令和6年3月21日にマダガスカル共和国で品種登録され、同国のChristian NTSAY首相、農業畜産大臣、高等教育・科学技術大臣の列席のもと、新品種が公表されました(写真1、2)。新品種は、マダガスカルの主食であるコメの生産性向上に貢献する成果として、農家や普及を担当する行政機関の関心が高く、新聞、テレビなど、数多くの現地メディアに取り上げられました。
開発した新品種は、Mavitrika(マヴィチカ)です(写真3)。マダガスカル語で「活力のある」という意味をもち、成長(成熟)が早く、生産性の低い環境でもよく育つ、という新品種の特性から、FOFIFAの研究者が提案しました。
同品種は、低肥沃度環境で優れた生産性をもつアウス稲(インドやバングラデシュで雨季前半に栽培される品種群)のDJ123とサブサハラアフリカの主要陸稲品種であるNERICA4の交雑後代から選抜、育成されたものです。2020年から2023年にかけて、マダガスカルの計31地点の栽培環境で生産力試験を実施した結果、同国の主力陸稲品種であるNERICA4に比べて、平均で6日短い到穂日数(播種日から出穂日までの生育日数)であること、低収量環境ではNERICA4に比べて19%有意に高い収量性であることを実証しました(表1)。「早生性」と「収量性」は稲の品種選択において農家が重視する形質であることから、Mavitrikaがもつ生育特性は、特に低収量地域の需要に合致するものといえます。
さらに、農家への食味試験と栄養成分分析を実施した結果、NERICA4と同等の嗜好性であること、対象地域で栽培された場合の精白米中の亜鉛含量が29ppmとNERICA4よりも23%高く、微量栄養素不足の改善にも寄与し得ることが確認されました。これらの特性から、マダガスカル農業畜産省種子管理委員会によって、マダガスカルの稲作農家へ普及できる可能性が十分に高いと判断されたことから、今回の品種登録に至りました。
今後、国際農研は、FOFIFAや農業畜産省と共同で、新品種の認証種子生産と農家への普及を進めます。マダガスカルは、一人当たりのコメ消費量が日本の2倍以上であり、国民の半数以上が稲作に従事する稲作大国です。しかし、国民の主食・主業であるイネの生産性が今日まで停滞しており、亜鉛をはじめ、微量栄養素の不足も深刻です。新品種が普及することで、マダガスカルの安定的なイネ生産、さらには同国の栄養改善や貧困削減に貢献することが期待されます。
関連情報
本研究は、運営費交付金プロジェクト「アフリカの食料問題解決のためのイネ、畑作物等の安定生産技術の開発」、「不良環境に適応可能な作物開発技術の開発」、及び「アフリカのための稲作を中心とした持続的な食料生産システムの構築」の支援を受けて行われました。
問い合わせ先など
国際農研(茨城県つくば市)理事長 小山 修
- 研究推進責任者:
- 国際農研 プログラムディレクター 藤田 泰成
- 研究担当者:
- 国際農研 生産環境・畜産領域 プロジェクトリーダー 辻本 泰弘
- 広報担当者:
- 国際農研 情報広報室長 大森 圭祐
プレス用 e-mail:koho-jircas@ml.affrc.go.jp