研究成果情報 - ブルキナファソ
国際農林水産業研究センターにおける研究成果のうち、成果が特に顕著で、広く利用を図ることが望ましいと考えられる成果を要約してご紹介しています。
- 有効土層の薄い土壌型プリンソソルにおけるソルガムの特異な施肥応答(2023)西アフリカには作物が根を張れる土層(有効土層)の厚さが50 cm以下で、水分保持能が低いプリンソソルと呼ばれる特殊な土壌が広く分布する。このプリンソソルでは、他の土壌型とは異なり、土壌水分の不足が主穀であるソルガムの収量を制限しており、さらに、最適な施肥量も有効土層が25 cmのプリンソソルでは他の土壌型と異なる。現在西アフリカで再整備が進んでいるソルガムの栽培指針において、プリンソソルとそれ以外の土壌型を区別する必要がある。
- 土壌型プリンソソルにおけるササゲ栽培では施肥と密植による増収効果が高い(2023)西アフリカのスーダンサバンナでは2つの土壌型(リキシソルとプリンソソル)の圃場が農家内で混在することが多い。プリンソソルは低肥沃であるが、施肥や密植によるササゲの増収効果がリキシソルよりも高く、両者を組み合わせるとより効果が高い。施肥を元肥と追肥に分けた場合、同量を元肥のみで施用する場合よりも収量が増加する。農家内で土壌が混在する場合、プリンソソルへ施肥や密植を優先することで総収穫量の増加が見込める。
- スーダンサバンナの栽培データを用いて気候変動がササゲ栽培に及ぼす影響を推定(2023)西アフリカのスーダンサバンナにおける詳細な栽培データを基にしたササゲの収量予測では、気候変動により今後30年間で降雨量が増すため、保水性の高い土壌(リキシソル)では多雨年にササゲの過湿害が深刻化する。一方、保水性の低い土壌(プリンソソル)では、引き続き干ばつが主な収量低下リスクとなる。半乾燥地であっても土壌型に応じて、干ばつだけでなく過湿害への対策が必要である。
- 根圏土壌を加えたリン鉱石添加堆肥は化学肥料と同等にソルガム収量を増加させる(2022)
サブサハラアフリカの農業生産性を制限している土壌の低いリン肥沃度の改善に向けた新規有機肥料として、ソルガム残渣にリン鉱石と根圏土壌を加えて堆肥化するとリン鉱石土壌添加堆肥が得られる。このリン鉱石土壌添加堆肥は、ソルガム栽培土壌の生物性を高め、既存の化学肥料と同等の増収効果をもたらす。
- アフリカ産低品位リン鉱石を用いて製造したリン肥料は天水稲作で輸入肥料を代替できる(2021)未利用のアフリカ産低品位リン鉱石を用いて製造したリン肥料は、ブルキナファソの天水稲作において、高価な輸入リン肥料である過リン酸石灰と同等の施肥効果を示すことから、代替となり得る。収量に寄与する肥料中のリン成分は場所で異なり、地下水位の高い河床では水溶性リンと可溶性リンの両者が、地下水位の低い河岸斜面では水溶性リンが寄与する。
- サイレージ調製はソルガムとトウジンビエ茎葉部の飼料利用率を向上させる(2020)
西アフリカ半乾燥地域においてソルガムとトウジンビエの茎葉部は反芻家畜の主な粗飼料源であるが、収穫後に放置すると栄養成分が減少する。しかしサイレージとして調製することで良質に発酵しその飼料利用率は向上して、乾季における飼料不足の緩和が期待される。
- 西アフリカ天水稲作の各農業生態域区分に最適なリン鉱石直接施用頻度(2020)
西アフリカ天水稲作に対する低品位リン鉱石直接施用効果は、1年目には農業生態域区分の違いで顕著な差異が認められる。全ての農業生態域で前年に施用したリン鉱石の残効が期待され、残効の大小によりそれぞれ最適な施用頻度が異なる。
- リン鉱石富化堆肥中の有効態リン含量に及ぼす根圏土壌添加の効果(2020)
ソルガム残渣にブルキナファソ産リン鉱石を加えて堆肥化する際に、根圏土壌を添加すると堆肥中のリン酸塩可溶化微生物(特にリン酸可溶化糸状菌)とリン酸可溶化酵素(特にアルカリホスファターゼ)が、土壌を添加しない場合に比べて多くなる。完熟堆肥中の有効態リン含量は、根圏土壌の添加により高くなる傾向が見られる。
- スーダンサバンナにおけるササゲ生産を広範囲で改善するための品種選抜法(2020)
ササゲの収量は狭い地域内でも場所や年によって大きく変動するが、土壌型と降水量によって栽培環境を分類し、環境間の収量安定性にもとづいて品種を選抜することで、広範囲における平均収量の改善に向けた効率的な育種および品種利用が可能となる。
- ⼟壌改良資材のナノ加⼯による施⽤効果の向上(2019)
石灰をナノ加工することで、土壌下方への移動が容易になる。リン鉱石をナノ加工し、酸性土壌にヘクタールあたり1,000 kg施用することによって、土壌酸度が矯正されるとともに、植物体にリンが吸収され、植物の生育が良くなる。
- アフリカ産低品位リン鉱⽯は炭酸カリウム添加焼成により肥料化できる(2019)
アフリカ産低品位リン鉱石の肥料化においてアルカリを加えた焼成処理が有効であるが、炭酸ナトリウムに代えて炭酸カリウムを添加することで土壌中のナトリウム集積を回避でき、肥料化が可能である。炭酸カリウム添加焼成物の施用効果は、市販の肥料である重過リン酸石灰と同等である。
- スーダンサバンナでは地中レーダーで鉄石固結層の出現深度を測定できる(2018)
地中レーダーで鉄石固結層の出現深度を精度良く測定できることを世界で初めて明らかにした。スーダンサバンナでは鉄石固結層の出現深度で土壌型や土地生産力を推定できるため、今後地中レーダーで簡単・迅速に土壌型および土地生産力の評価が可能になる。
- スーダンサバンナでは間作を除いた保全農業で十分土壌侵食を抑制できる(2018)
スーダンサバンナでは最小耕起と作物残渣マルチの2要素からなる保全農業で土壌侵食を抑制でき、「マメ科作物との間作」という要素を加えても更なる土壌侵食抑制効果は得られない。