国立研究開発法人 国際農林水産業研究センター | JIRCAS

生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学-政策プラットフォーム(IPBES)「生物多様性と生態系サービスに関する地球規模アセスメント報告書」概要

2019-05-10

生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム(Intergovernmental Science-Policy Platform on Biodiversity and Ecosystem Services: IPBES)は、「生物多様性と生態系サービスに関する地球規模アセスメント報告書[Global Assessment Report on Biodiversity and Ecosystem Services]」の政策決定者向け要約を公表した。50か国の専門家が15000件の文献を精査した結果に基づき、過去50年間に経済開発が自然にもたらした影響について包括的に分析するとともに、今後数十年間に起こりうるシナリオを提示したものであり、主な概要は以下のとおり。

・今日、800万の動植物種のうち、100万種が今から数十年内に絶滅しかねないという、人類史上いまだかつてない状況に直面している。

・主な陸上生息環境の生物種の豊富さは、1900年以来、平均で少なくとも20%減少した。両生類の40%以上、珊瑚礁を形成する珊瑚の約33%、海洋哺乳類の3分の1以上、昆虫については暫定的な推定で約10%が絶滅の危機にさらされている。16世紀以来少なくとも680種の脊椎動物が絶滅に追いやられ、食料生産や農業に用いられる家畜品種については、2016年までに9%が絶滅したほか、少なくとも1000品種が現在絶滅の危機にある。

・生物多様性の減少は人間活動に起因するものであり、影響の大きいものから順に、(1)土地及び海洋の利用の変化、(2)生物有機体の直接利用、(3)気候変動、(4)汚染、(5)侵略的外来種が要因と考えられる。1980年以来、温室効果ガスの排出は倍増し、既に気温を少なくとも0.7度押し上げている状況にあって、気候変動の影響は、生態系から遺伝子レベルまでさらに拡大していくと予想されるため、今後その順位が上記(1)(2)を上回る可能性がある。

・生物多様性の悪化は、貧困、飢餓、健康、水、都市、気候、海洋、森林等に関連する44のSDGs目標のうち35(80%)の進捗を遅らせる要因にもなっており、単なる環境の問題ではなく、開発、経済、安全保障、社会、規範等多くの分野に関連する課題であることを認識する必要がある。

・手つかずの生態系システムは、農業拡大による影響には大きな地域差がみられつつも、とりわけ地球上で最大の生物多様性を誇る熱帯地域での喪失が問題になっている。例えば、1980年から2000年の間、主にラテンアメリカにおける牧牛場(4200万ヘクタール)と東南アジアにおけるプランテーション(750万ヘクタール、内パームオイルが80%)の拡大を原因として、合計1億ヘクタールの熱帯雨林が失われた。

・2050年以降を見通したトレンドは、大きな変革をもたらす政策を実現する場合を除き、いずれのシナリオでも負の影響が続くことが予想される。持続可能性のためには、農業、森林、海洋、淡水、都市、エネルギー、金融等のセクターを横断する取組を進めるとともに、食料生産とエネルギーのトレードオフ、インフラ、淡水と海洋のマネージメント、生物多様性保全等を総合的に考慮する必要がある。

 

より詳しい内容に関しては、以下のサイトを参照のこと

https://www.ipbes.net/news/Media-Release-Global-Assessment

なお、概要に関する本翻訳は、IPBESから正式に承認を受けたものではなく、翻訳上の誤りなどの責任は文責にある。(文責:研究戦略室 増山寿政・飯山みゆき)