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FAOアジア・太平洋地域事務所(Regional Office for Asia and the Pacific)のBlue Growth Initiative概要

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FAOは地域ごとに重点活動(イニシアチブ)を設けています。アジア・太平洋地域では、3つのイニシアチブを設けており、そのひとつがBlue Growth Initiativeです(http://www.fao.org/asiapacific/perspectives/blue-growth/en/)。これは、水産業の発展により、タンパク質供給源である魚の生産量を増加することにより食料と栄養の安全保障に貢献すると伴に、生計改善、持続的な水産資源の活用を目指しています。そのために、政策・戦略・行動計画の支援、農民の適応力・レジリエンス向上促進、革新的な技術による環境への負荷低減・疾病監視制御システムの構築、貧困農家への品質管理・持続性・市場アクセス改善の支援、森林・水・土地資源の適正管理の支援を行っています。

Blue Growth Initiativeは、2014年3月のモンゴルのウランバートルで開催された第32回FAOアジア・太平洋地域会議で採択され、具体的な活動が、バングラデシュ、インドネシア、フィリピン、スリランカ、ベトナム、東ティモールで行われてきました。例えば、バングラデシュでは、高い収入が得られるエビ養殖が急速に広まりましたが、環境悪化、農業との競合が起こり、その対策として、持続的なエビ養殖の普及を強化してきました。具体的には、養殖エビの成育環境、地域環境、生物多様性のモニタリングシステムを構築し、持続的エビ養殖の効果を確認してきました。

The 2030 agenda and the sustainable development goals: The challenge for aquaculture development and management(2030アジェンダと持続可能な開発目標:水産養殖開発と管理の課題)によると、SDGsのほとんどが水産養殖と関連があり、持続的水産養殖を推進するガイドラインやイニシアチブは広くSDGsを支援するとあります。貧困や飢餓の撲滅、誰一人残さない(Leaving no-one behind)、資源の有効利用と廃棄低減、レジリエントな水産養殖システム、生物資源の共同利用と保護、公正で生産的なバリューチェーンなど多岐にわたります。水産養殖開発のためには、適切な政策と計画、効果のある法律・規則、支援体制(トレーニングやアドバイスなど)、財政支援とインセンティブが必要で、持続的でなく技術、市場の不完全さ、不適切な社会的制約などの問題点を解決しなくてはならないことが指摘されています。

JIRCASでは、フィリピン、タイ、マレーシア、ラオス、ミャンマーにおいて、環境保全と収益性向上を両立する魚、エビ、貝、海藻を組み合わせた複合養殖技術の開発や、海域の生物による環境浄化技術、生態系と調和した持続的な漁場利用技術を開発しています。これらの研究開発は、栄養供給の改善、現地住民の生活水準向上を目指しており、FAOとの連携を強化することにより、Blue Growth InitiativeやSDGsへの達成に貢献することが期待できます。

(文責:松本成夫)

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