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国連栄養常任委員会(UNSCN)「『栄養のための行動の10年』へのスポットライト [UNSCN NEWS 42: A Spotlight on the Nutrition Decade.」概要

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国連栄養常任委員会(the United Nations System Standing Committee on Nutrition、UNSCN)によるUNSCNニュースは、国際栄養改善の分野で重要な課題に関する情報を提供している。今号は「栄養のための行動の10年(2016-2025年)」として、今後9年間で栄養失調を解決する為に必要とされる、以下の6つの行動分野 について特集している。

• 行動分野1: 健康的な食生活の為の持続的で強靭なフードシステム (Sustainable, resilient food systems for healthy diets)

• 行動分野2: 基本的栄養介入の国民皆保障を目指した保健システム整備( Aligned health systems providing universal coverage of essential nutrition actions)

• 行動分野 3: 社会的保護と栄養教育(Social protection and nutrition education)

• 行動分野4: 栄養改善のための交易と投資 (Trade and investment for improved nutrition)

• 行動分野5: 全世代の栄養改善を促進する環境 (Safe and supportive environments for nutrition at all ages)

• 行動分野6: 栄養に関するガバナンスと アカウンタビリティ(Strengthening governance and accountability for nutrition)

 

中でも、行動分野1は、生物多様性の有効利用、 バイオフォーティフィケーション(Biofortification)、の役割に着目している。農業における生物多様性は健康的な食生活を促進する上で欠かすことができず、(1)栄養に富む作物を対象とした地域に根ざしたバリューチェーン、(2) 公的・制度的な資源調達、(3)果物・野菜の入手可能性拡大、(4)生産・消費の多様化を促す適切な政策誘引、等の手段を通じて実現可能である。農業システムは長期的に人々が必要とするミネラル・ビタミンを供給する最も効果的で持続的な栄養改善手段であるものの、途上国の現状では需要に供給が追いついていない状況である。バイオフォーティフィケーション(ミネラルやビタミンを補強した農作物の開発と利用)の利点は、既に日常食されている食品の鉄分・亜鉛・ビタミンA等の微量栄養素を改良するため、生産者・消費者の行動変化や追加的費用を必要とせず、とくに貧困層の集中する辺鄙な農村地域での介入が容易になる点が挙げられる。その一方で、育種から実際の栄養効果が期待されるまでのタイムスパンが長期にわたることから、研究投資資金の調達にしばし困難を極めるという課題を抱えている。こうした状況の中、バイオフォーティフィケーション研究を国際的に牽引してきたハーベスト・プラス(HarvestPlus)プログラムの下での育種-栄養研究は、14年前の開始時期から30カ国で12作物に及ぶ100種以上の生物学的栄養強化品種を公開し、現在さらに25カ国で公開準備が進められている。作物の品種は現在のところ、国が定めた高収量・病害虫耐性という観点から認証されている。他方、現在までにミネラル・ビタミン含有量を基準とした認証システムは存在しないが、将来的に品種公開の基準として標準化されることが期待されている。

 

より詳しい内容に関しては、以下の報告書原文を参照のこと

UNSCN News 42 – A Spotlight on the Nutrition Decade

https://www.unscn.org/uploads/web/news/UNSCN-News-42.pdf 

なお、概要に関する本翻訳は、国際連合から公式に承認を受けたものではなく、翻訳上の誤りなどの責任は文責にある。

(文責:研究コーディネーター  飯山みゆき)

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