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CGIAR「CGIAR Strategy and Result Framework」および「CGIAR Strategy and Result Framework 2016 -2030」の概要

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CGIARは貧困や飢餓・栄養失調、そして環境劣化の解決に向けて活動を行う世界規模の農業研究・開発ネットワークであり、15の国際農業研究機関(CGセンター)が参画している。近年、CGIARでは、より効率的で実質的な「開発にむけた農業研究(AR4D)」の実施を目的とした改革が行われており、この2つの文書は今後のCGIARのAR4D実施に向けた「 研究・開発戦略および目標達成のための枠組み(CGIAR Strategy and Result Framework: SRF)」を規定するものある。

「CGIAR Strategy and Result Framework」は、ドナー各国から2010年に承認された新たなCGIARの戦略と枠組み(SRF)を規定する文書である。この文書では、CGIARの研究・開発活動が重要となる背景やこれまでの貢献といった情報に加え、「CGIARシステム全体が達成目標とする成果(System Level Outcomes: SLOs)」の設定と、「CGセンター横断型の研究プログラム(CGIAR Research Program: CRP)」の実施を通じて、世界的問題の解決に対してCGIARシステム一体となった貢献を行うことが記されている。

ここに定められたSLOs は、貧困の削減 (Reducing rural poverty)、 食料安全保障の向上(Improving food security)、栄養供給と健康状態の向上(Improving nutrition and health)、自然資源の持続的管理(Sustainable management of natural resources)の4つである(pp. 37表2.1、pp. 44-56)。このSLOs達成の基幹となる活動としてCRPを設立し、各センターの枠組みを超え、連携した活動を行うことが計画されている(pp. 69-72)。また、システム全体として、 ジェンダー不平等(Gender inequality)、人材育成と教育・情報共有 (Capacity Strengthening, Learning and Knowledge Sharing)、国際公共財(International public goods)の3つの横断的な課題(Cross-cutting issue)に取り組みが盛り込まれている(pp. 66-69)。

さらにこれを発展させ、2030年の達成目標までのSRFを記したものが、「 Strategy and Result Framework 2016-2030」(2015年承認)である。この新たなCGIARのSRFは、UNが定めた「持続可能な開発目標( Sustainable Development Goals: SDGs)」に対応するものであり、 2030年のSDGs達成に直接的な貢献を行うことを目指している。大きな発展部分として、以下の点があげられる。

1)SLOsの見直しと数値目標の設定
貧困削減(Reduce poverty)、健康のための食料安全と栄養供給の向上(Improving food and nutrition security for health)、自然資源と生態系サービスの向上(Improved natural resources and ecosystem services)の3つに整理され、特筆すべきこととして、それぞれに2022年と2030年に達成すべき目標とする数値が設定された(pp. 5表5)。

2)SLOs達成に向けた中間開発成果(Intermediate Development Outcomes: IDOs)の設定
各研究活動のアウトプットやアウトカムからCGIARシステムとしての 成果につなげるため、インパクトパスウェイの明確化と達成度の評価を目的としたIDOs、さらにその過程にあるsub-IDOsが設定された(pp. 15図2)。

3)横断的な課題(Cross-cutting issue) の見直しとIDOsの設定
研究分野や地域横断的な課題として、気候変動(Climate change)、ジェンダーと若者(Gender and Youth)、政策と社会制度(Policies and institutions)、人材育成(Capacity development)が設定され(pp. 22)、それぞれについてIDOs、sub-IDOsが設定され、システムとしての取り組みが設定された(pp. 23図3)。

この2つは、これまでのCGIARの活動の背景・目的・貢献や、近年のCGIAR改革と今後の研究体制を理解するために有用な情報が記載されている文書である。


詳しくは以下のリンクの 原本を参照。

「CGIAR Strategy and Result Framework」
http://library.cgiar.org/bitstream/handle/10947/2608/Strategy_and_Resul…

「CGIAR Strategy and Result Framework 2016 -2030」
https://library.cgiar.org/bitstream/handle/10947/3865/CGIAR%20Strategy%…

(文責:研究コーディネイター 村中聡)

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