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1015. 医食同源

1015. 医食同源
医食同源という言葉があるように、食べ物と薬とは源を同じくするもので、どちらも体の調子に影響を及ぼすことができます。食事を変えることで健康にどのような効果があるのかを示す研究について、本日は、nature medicine誌に掲載された記事(Venkatesan 2024)をご紹介します。
「食事と栄養が人間の健康や病気に直接影響を与える可能性がある」という概念は新しいものではありませんが、最近また急に注目を浴び始めています。不健康な食事は、肥満や、心臓病・2 型糖尿病などの非感染性疾患のリスクを大幅に高めることが知られています。さらに、がん、骨粗鬆症、認知症などのリスクを高める可能性があるとも言われています。健康的な食事へのアクセスは健康管理の1つの側面なのです。
世界疾病負荷調査によると食事の内容に起因した疾病や死亡も多く、危険因子としてはナトリウム摂取量の多さ(注:ナトリウムは主に食塩の形で摂取されるので塩分の摂りすぎのこと)、全粒穀物の摂取量の少なさ、果物や野菜の摂取量の少なさなどが挙げられています。またEATランセット委員会は、植物性タンパク質、不飽和脂肪、全粒穀物、果物と野菜を十分に摂り、肉や精製穀類や砂糖の摂取を控えることで、健康が促進され、発病リスクが低下することを示しました。
食事をコントロールすることによって体調管理をする概念は「食品は薬である(food is medicine)」または「薬としての食品(food as medicine)」とも呼ばれます。治療の第一の選択として食事の介入が適切であることは多いのですが、実際に意味のある食事介入が行われることはあまりありません。というのは、エビデンスには多くのギャップがあり、臨床試験による食事介入を通じて健康改善を示した治療はまだ一部の分野に留まっているからです。
食事介入の健康への影響を調べる臨床研究は、費用、標準化の問題、参加者のコンプライアンス、限られたサンプル数などのため実施が困難です。健康的な食事に助成金を与えたり不健康な食事に課税したりという政策も試みられていますが、介入に科学が入る余地、研究がそのような介入にアクセスできること、も重要です。特にこのデジタル時代においては誤った情報が蔓延しがちで、確かなエビデンスがないと誤解を招く危険性もあるのです。
(参考文献)
Venkatesan, P. Food is medicine: clinical trials show the health benefits of dietary interventions. Nat Med 30, 916–919 (2024). https://doi.org/10.1038/s41591-024-02891-1
(文責:情報広報室 白鳥佐紀子)