国際共同研究プロジェクトの発足記念式典をインドネシアで開催
―熱帯林のレジリエンスを高め、持続的な産業への改善を目指す―
令和4年10月7日
国際農研
住友林業株式会社
筑波大学
森林研究・整備機構森林総合研究所
国立環境研究所
長崎大学
国際共同研究プロジェクトの発足記念式典をインドネシアで開催
―熱帯林のレジリエンスを高め、持続的な産業への改善を目指す―
ポイント
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概要
国際農林水産業研究センター(国際農研)は、令和4年10月3日(月)、インドネシア共和国のジャワ島(ジョグジャカルタ市内)にて、SATREPSの枠組みによる「熱帯林強靭化プロジェクト」の発足記念式典を開催しました。
本プロジェクトは、インドネシアの森林を対象に、気候変動に脆弱な既存林業のレジリエンス(復元力・回復力)を高め、持続的な産業としていくことを目指す国際共同研究プロジェクトです。具体的には、ゲノム選抜を活用して気候変動適応型の林木品種(ファルカタ、フタバガキなど)を開発するとともに、組織培養等による種苗生産技術を確立します。また、木材生産量や生態系機能(温室効果ガス吸収や非木材資源量など)をもとに、地域社会や地域経済の観点から、既存熱帯林業への気候変動適応型品種の導入効果を評価します。
本プロジェクトは、日本では国際農研が、インドネシアではガジャマダ大学がそれぞれ研究代表機関となり、令和4年4月に正式に採択されました。実施体制は、日本側6機関(国際農研、住友林業筑波研究所、筑波大学、森林研究・整備機構森林総合研究所、国立環境研究所、長崎大学)とインドネシア側2機関(ガジャマダ大学、国立研究革新庁)で構成され、令和4年度から令和8年度までの5年間実施されます。
記念式典は二部構成で行い、第一部は、国際農研理事長、ガジャマダ大学長、インドネシア環境林業省生産林総局森林利用ビジネスコントロール部長、JICAインドネシア事務所次長、JSTシンガポール事務所長らが出席し、祝辞ならびにプロジェクトへの期待が示されるとともに、研究成果の発現と社会実装を達成するために両国関係者が協力・連携して取り組むことが確認されました。第二部は、日本およびインドネシア両国の研究者が、インドネシアの森林・林業の課題とプロジェクトの実施計画を説明しました。さらにプロジェクト対象地の一つであるガジャマダ大学ワナガマ演習林を視察し、チークをはじめとする熱帯森林遺伝資源の集積状況を確認しました。
熱帯地域の森林は他の地域に比べて気候変動の影響を大きく受けるとの予測もあり、気候変動に強靭な種苗の植栽を通じたレジリエンスの向上は急務です。今後、国際農研は他の参画機関と連携して、相手国であるインドネシア共和国の林業技術の向上を通じ、地球規模課題解決へ向けたSDGsへの貢献に取り組んでまいります。
問い合わせ先
国際農研(茨城県つくば市) 理事長 小山 修
- 研究推進責任者:
- 国際農研 プログラムディレクター 林 慶一
- 研究担当者:
- 国際農研 林業領域 谷 尚樹(プロジェクト代表者)
- 広報担当者:
- 国際農研 情報広報室長 大森 圭祐
プレス用 e-mail:koho-jircas@ml.affrc.go.jp
本資料は、農政クラブ、農林記者会、農業技術クラブ、筑波研究学園都市記者会、環境省記者クラブ、環境問題研究会、長崎大学記者クラブに配付しています。 |
※国際農研(こくさいのうけん)は、国立研究開発法人 国際農林水産業研究センターのコミュニケーションネームです。
新聞、TV等の報道でも当センターの名称としては「国際農研」のご使用をお願い申し上げます。
用語の解説
- 1) SATREPS
地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(Science and Technology Research Partnership for Sustainable Development)の略称です。科学技術と外交を連携し、相互に発展させる「科学技術外交」の一環として、地球温暖化や生物資源、防災、感染症といった地球規模の課題解決を目指す、日本と開発途上国との共同研究事業です。国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)ならびに国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED) と独立行政法人国際協力機構(JICA) が共同で実施しています。
- 2) 熱帯林強靭化プロジェクト
SATREPSプロジェクト「気候変動適応へ向けた森林遺伝資源の利用と管理による熱帯林強靭性の創出」の略称です。令和3年5月に条件付きで採択され、外務省による相手国(インドネシア共和国)との実施にかかわる国際約束の締結、JICAによる相手国関係機関との実務協議を経て、令和4年4月に正式採択となりました。
JSTのSATREPS Webサイト
https://www.jst.go.jp/global/kadai/r0301_indonesia.html- 3) ゲノム選抜
統計的手法により、ゲノム全体にわたるDNA マーカーの配列から、個体の表現型や遺伝的差違を予測して選抜する方法です。選抜の際に、実際に栽培して形質の評価を行う必要がないことから、選抜の過程を大幅に短縮することができます。