米国科学アカデミー紀要の最優秀論文賞を受賞:BNI強化コムギの研究

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お知らせ

令和4年 3月24日
国    際    農    研
国際トウモロコシ・コムギ改良センター
バ ス ク 大 学
日本大学生物資源科学部

 

米国科学アカデミー紀要の最優秀論文賞を受賞:BNI強化コムギの研究

ポイント

  • 生物的硝化抑制(BNI)1)強化コムギの研究が、米国科学アカデミー紀要(PNAS)より2021年の最優秀論文賞(Cozzarelli Prize)を受賞
  • 本賞は、コムギと野生種の交配という技術的に困難な課題をクリアし、少ない窒素肥料で生産性を維持できるコムギ新品種を開発した点を高く評価
  • 普及により、水質汚染や温室効果ガス排出につながる窒素汚染の防止に期待
  • 授与式は令和4年5月1日(米国東部時間)にオンライン開催

概要

 国際農研と国際トウモロコシ・コムギ改良センター(CIMMYT)、バスク大学、日本大学生物資源科学部の共同研究で発表した論文が、米国科学アカデミー発刊の「米国科学アカデミー紀要(PNAS:Proceedings of the National Academy of Sciences of United States of America」から、2021年の最優秀論文賞(Cozzarelli Prize2))を受賞しました。本受賞は、野生コムギ近縁種であるオオハマニンニク3)に、BNI能を制御する染色体領域を特定し、多収コムギ品種との属間交配4)によって世界初となるBNI強化コムギを開発したことが評価されました。本研究の成果によって、少ない窒素肥料で生産性を維持しながら、水質汚染や温室効果ガス排出につながる窒素汚染の防止に貢献することが期待されています。

 PNASは、科学全般に関する論文を年間3,000本以上掲載しており、世界で最も引用の多い総合科学誌の一つです。2021年にPNASに掲載された6分野5)、合計3,476報のうち、科学的卓越性と独創性を反映した各1論文、合計6論文にのみ最優秀論文賞が授与されます。本研究は、応用生物・農業・環境科学部門での受賞となりました。

 授与式は、令和4年5月1日(米国東部時間)にオンラインで行われ、本成果を紹介した動画も公開されます。

 本研究成果は、農林水産省「みどりの食料システム戦略」に位置付けられており、また、令和3年12月23日に農林水産省が発表した「2021年農業技術10大ニュース」に選定されました。

用語の解説

1) 生物的硝化抑制(BNI)

生物的硝化抑制(Biological Nitrification Inhibition)は、植物自身が根から物質を分泌し硝化を抑制することを指しています。

2) Cozzarelli Prize

2005年に設立され、2007年にPNASの編集長を務めた生化学者Nicholas R. Cozzarelliの栄誉を称えて命名された賞です。

3) オオハマニンニク

学名 Leymus racemosus (Lam.) Tzvelevの多年生イネ科植物です。ユーラシア大陸の砂地に分布する野生コムギ近縁種で、コムギとは全く異なる生態、形態を持ちます。通常、コムギとは交配できませんが、属間交配の手法により、交配することが可能です。

4) 属間交配

異なる属に属する生物間の交配のことです。コムギでは、属間交配を抑制する遺伝子が知られており、この遺伝子を持たないコムギ品種を用い、さらに胚培養法を活用することで、近縁、遠縁の植物との雑種を作ることができます。

5) PNASに掲載された6分野

物理学・数理科学、生物科学、工学・応用科学、生物医学、行動・社会科学、応用生物・農業・環境科学の6分野。

 

 

参考資料

米国科学アカデミーのプレスリリース
http://www.nasonline.org/news-and-multimedia/news/pnas-cozzarelli-2021…

受賞者:グントゥール V. スバラオ(国際農研)、岸井正浩(CIMMYT)、Adrian Bozal-Leorri、Ivan Ortiz-Monasterio、Xiang Gao、Maria Itria Ibba、Hannes Karwat、M. B. Gonzalez-Moro、Carmen Gonzalez-Murua、吉橋忠(国際農研)、飛田哲(日本大学)、Victor Kommerell、 Hans-Joachim Braun、岩永勝(前国際農研理事長)

受賞タイトル:Enlisting wild grass genes to combat nitrification in wheat farming: A nature-based solution(コムギ生産の硝化対策に野生種遺伝子を活用:自然に根差した解決策)

<関連情報>

予算:運営費交付金プロジェクト「生物的硝化抑制(BNI)技術の活用による低負荷型農業生産システムの開発

問い合わせ先

国際農研(茨城県つくば市)理事長 小山 修
研究推進責任者:国際農研 プログラムディレクター 林 慶一    
研究担当者:国際農研 生産環境・畜産領域 グントゥール V. スバラオ
      国際農研 生物資源・利用領域 吉橋 忠    
広報担当者:国際農研 情報広報室長 大森 圭祐    
      プレス用 e-mail:koho-jircas@ml.affrc.go.jp

本資料は、農政クラブ、農林記者会、農業技術クラブ、筑波研究学園都市記者会に配付しています。

※国際農研(こくさいのうけん)は、国立研究開発法人 国際農林水産業研究センターのコミュニケーションネームです。
新聞、TV等の報道でも当センターの名称としては「国際農研」のご使用をお願い申し上げます。

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