アフリカ稲作におけるケイ素欠乏の実態とその要因

要約

アフリカの農家圃場ではケイ素欠乏値を示すイネが広範にみられ、土壌のケイ酸供給力不足、不安定な水条件をもつ稲作生態系、および窒素施用量の増加を要因として、ケイ素欠乏のリスクが高まる。

背景・ねらい

イネは茎葉部にシリカを蓄積させることで病虫害などに対する抵抗性を高めている。イネは他の作物に比べてケイ酸吸収量が特異的に大きいことから、アフリカのコメ生産を拡大するためには、生産量に応じたケイ酸の安定供給が求められる。しかし、風化土壌の卓越するアフリカ地域おいては、土壌からのケイ酸供給力が乏しいことが予測され、また、これまでケイ酸の肥培管理は行われていない。そこで、アフリカの主要なコメ生産国を対象として、農家圃場の稲体、土壌、および栽培条件を分析し、ケイ素欠乏の実態とその要因を明らかにする。

成果の内容・特徴

  1. ナイジェリア、マダガスカル、ギニア、ガーナ、ベナン、モザンビーク、およびケニアの7か国にわたる農家圃場99地点のうち67地点(67.7%)の圃場で、成熟期の稲わらケイ素濃度がイネ生育に影響を与えるとされる欠乏値の5%*を下回る(図1、2)。
  2. 稲わらのケイ素濃度は、特に、降水量が多く風化土壌(Oxisols、Ultisolsなど)の卓越した熱帯高地および熱帯湿潤気候帯で低い(表1)。
  3. 湛水培養(40°C1週間)による土壌の水溶性ケイ酸量は、稲わらケイ素濃度の変異をよく説明しており、アフリカ地域における土壌のケイ酸供給力の指標として有効である(図2)。
  4. 稲わらのケイ素濃度は、灌漑水田>天水田>天水畑(陸稲)の順に、不安定な水条件をもつ稲作生態系ほど低くなる(図3)。
  5. 窒素施用量と稲わらのケイ素濃度には負の相関がみとめられる(図3)。
    *ケイ素欠乏値は、国際稲研究所Handbook series(Dobermann and Fairhurst, 2000)など参照。

成果の活用面・留意点

  1. 湛水培養で溶出される土壌の水溶性ケイ酸量は、アフリカのイネ生産圃場における土壌のケイ酸供給力評価法として活用できる。
  2. ケイ素欠乏リスクの高い地域・栽培条件と病虫害多発圃場とを照合させることで、圃場への稲わら鋤き込みなどケイ酸管理技術に関する研究促進が期待される。
  3. ケイ酸管理技術の導入には、稲わらケイ素濃度の改善が病虫害の軽減などアフリカのコメ増収に繋がることを示す必要がある。

具体的データ

  1. 図1 稲わらと土壌を採取した農家圃場の位置

    図1 稲わらと土壌を採取した農家圃場の位置
    「施肥あり」のうち有機物資材が3地点、化学肥料が61地点。気候区分図はHarvestChoiceから引用。

  2. 表1 気候区分別の稲わらケイ素濃度、窒素施用量、および土壌分析値の比較

    表1 気候区分別の稲わらケイ素濃度、窒素施用量、および土壌分析値の比較
  3. 図2 土壌のケイ酸溶出量と稲わらケイ素濃度との関係

    図2 土壌のケイ酸溶出量と稲わらケイ素濃度との関係

  4. 図3 稲作生態系別にみた窒素施用量と稲わらケイ素濃度推定値との関係

    図3 稲作生態系別にみた窒素施用量と稲わらケイ素濃度推定値との関係
    観測変数から稲わらケイ素濃度の変動を説明する重回帰モデル(R2=0.59)を作成して、感度分析を行った

所属

国際農研 生産環境・畜産領域

分類

研究A

国名

ガーナ

ギニア

ケニア

ナイジェリア

ベナン

マダガスカル

モザンビーク

プログラム名

情報収集・提供

予算区分

交付金 » 理事長インセンティブ

研究期間

2011年度、2012年度

研究担当者

辻本 泰弘 ( 生産環境・畜産領域 )

科研費研究者番号: 20588511

村中 ( 研究戦略室 )

浅井 英利 ( 生産環境・畜産領域 )

科研費研究者番号: 30599064

齋藤 和樹 ( AfricaRice )

ほか
発表論文等

Tsujimoto, Y. et al. (2014) Field Crops Research, 155: 1-9

https://doi.org/10.1016/j.fcr.2013.10.003

日本語PDF

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English PDF

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2013_D01_A4_en.pdf125.23 KB

ポスターPDF

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