短日による日本稲の部分不稔の発生とその要因
石垣島の水稲二期作および三期作において「日本晴」よりも晩生の多くの品種で部分不稔が発生する。この不稔は短日条件により葯が短縮し花粉数が減少するため生じるとみられる。
背景・ねらい
石垣島では亜熱帯気候を利用して年2件あるいは3作栽培による稲雑種集団の世代促進が行われている。しかし日本本土と比べて顕著な短日条件にある二期作や三期作では、感光性の強い関東以西の普及品種の出穂が大幅に促進され、東北・北陸の普及品種よりも早生化するなど本土では見られない現象が認められている。
本研究では、石垣島の二期作および三期作において関東以西の品種で観察された部分不稔の発生要因を検討する。
成果の内容・特徴
- 石垣島の二期作および三期作では、「日本晴」より晩生の日本品種の多くで部分不稔が発生する。不稔発生の程度は三期作で特に多い(表1)。
- 部分不稔を生じる品種は、短日下で栽培すると葯が顕著に歪曲・短縮化する(図1)。
- 晩生品種「シンレイ」に短日処理(9時間日長)した結果、葯の短縮化は、①短日処理による幼穂形成の過剰促進(図2の長日区と2区との比較)、②生殖成長期間(特に前期)の短日条件(図2の長日区と1区および短日区と2~5区との比較ジによって引き起こされた。短日により幼穂形成が促進された場合でも、幼穂形成後、長日処理すると菊の短縮化は軽減したのに対し(図2の2区)、短日処理を継続すると菊の短縮化は著しくなる(図2の短日区)。
- 短日による葯の短縮化により葯当たりの花粉数は820個から320個に減少する。これにより、不稔歩合は3%から28%に増加する(図2の長日区と短日区)。
- シンレイにコシヒカリを交配すると不稔の発生程度は平常値に回復する(図表略)。
- 以上の結果、二期作や三期作においては、感光性の強いシンレイでは幼穂形成が著しく促進される上、幼穂形成後はさらに短日条件となることから、葯が大きく短縮し花粉数が不足して部分不稔が生じると考えられる。
成果の活用面・留意点
ここで観察された不稔は主に花粉数の減少によって引き起こされるとみられるため、現行の二期作や三期作栽培において晩生品種では自然交雑による混種が起こる可能性がある。このため不稔発生の月別変異を調べ、不稔発生の少ない作期を策定する必要がある。
具体的データ
- Affiliation
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国際農研 沖縄支所
- 分類
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研究
- 予算区分
- 総合的開発(次世代稲作)
- 研究課題
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世代促進による直播適性・複合耐性等の効率的遺伝変異固定技術の確立
- 研究期間
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平成10年度(平成7~10年)
- 研究担当者
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岡本 正弘 ( 沖縄支所 )
小田 俊介 ( 沖縄支所 )
寺内 方克 ( 沖縄支所 )
小林 真 ( 沖縄支所 )
出田 収 ( 沖縄支所 )
松岡 誠 ( 沖縄支所 )
長峰 司 ( 農業生物資源研究所 )
- ほか
- 日本語PDF
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1998_17_A3_ja.pdf1.01 MB