G-5. 国内外への展開を目指した熱帯・島嶼研究拠点の戦略的熱帯果樹研究【戦略的熱帯果樹研究】

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情報収集分析

2018-09-25

本研究では、国際農研 熱帯・島嶼研究拠点のもつ比較優位性(亜熱帯気候、多数の遺伝資源)を活かし、今後の地球規模の気候変動を見据えた長期的視野に基づく課題に取り組むことにより、主要な産地における熱帯果樹生産の安定化、さらなる付加価値化を目指します。またこれらの研究を通じて国内の熱帯果樹生産・消費の促進および温暖化対策への貢献を図ります。今後の国内外の熱帯果樹研究開発のニーズを視野に入れ、国際農研の熱帯果樹研究の基盤を強化することを目的に本研究課題を実施します。

対象樹種であるマンゴーは、世界で3番目に生産量の多い熱帯果樹であり、東南アジアにおいては重要な換金作物です。しかし、品種や栽培技術の開発、高付加価値化への体系的な取組みが進んでおらず、他の主要果樹に比べ、研究開発の貢献の余地が大きいことが特徴です。本研究では、遺伝的多様性が大きく、遺伝資源が広く収集・維持されているミャンマー国との共同研究を行い、現地でのマンゴー在来品種の特性評価や日本での品種識別技術の開発を実施します。また、拠点において安定開花に向けた開花制御技術の開発を進め、ミャンマーをはじめとする主産地におけるマンゴー生産の安定化、付加価値化に向けた科学的知見の集積を試みます。また、JIRCASマンゴー遺伝資源サイト(https://www.jircas.go.jp/ja/database/mango/mango-top)では、国際農研が保存しているマンゴー遺伝資源の調査・試験から得た知見やデータの概要を掲載し、国内の研究者、生産者、消費者に情報を提供しています。

一方、パッションフルーツは、国内ではパインアップル、マンゴーに次ぐ生産量を占める熱帯果樹で、温暖化対策へ貢献するべく国内生産の拡大が期待されています。拠点で保有する遺伝資源から得られる科学的知見や育種素材を、国内の農家、関連企業および自治体等に提供することで、国内熱帯果樹研究ネットワークに貢献することができると考えます。パッションフルーツは昨今、生産地におけるウイルス病への対策が課題となっており、種苗生産や品種の普及に欠かすことのできない健全な苗の安定増殖に向けたウイルスフリー化の技術開発を試みます。また、高温期に安定した開花結実を示す近縁種を利用した、パッションフルーツの耐暑性育種素材の開発を進めます。

写真1. ミャンマーの市場に並ぶマンゴー主要品種”Sein Ta Lone”

写真2. ミャンマーでのマンゴー果実の特性調査

写真3. 簡易茎頂接ぎ木によるパッションフルーツウイルスフリー化の検討(左:接ぎ木2週間後、右:1か月半後)

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