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1152. バーチャルウォーター

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「バーチャルウォーター(仮想水)」という言葉をご存じでしょうか。食料の生産には大量の水が使われています。たとえば1kgの小麦を生産するのには約1,300リットル、1kgの牛肉の生産には約15,500リットルの水が必要とも言われています(Chapagain and Hoekstra 2004)。そうすると、小麦や肉を輸入するということは水を輸入しているにも等しいということになります。もし輸入した食料を生産していたとしたら水がどのくらい必要であったかという換算を行ったものがバーチャルウォーターで、John Anthony Allanによって1993年に提唱された概念です。


農業などに用いられる淡水の量には地域によって大きな偏りがあります。この不平等な水の分配を調整する役割を果たしているともいえるのがバーチャルウォーターの取引であり、食料の貿易によって水が国境を越えて移動したのだとも考えられます。日本は海外から多くの食料を輸入しているので、その生産に必要であっただろう国内の水を使わずに済んでいます。年間で海外から日本に輸入されたバーチャルウォーター量は日本国内で使用される年間水使用量と同程度とも言われています(環境省ウェブサイト)。


人類が利用している水の大半は食料生産に使われており、今後の人口増加や気候変動がバーチャルウォーターに影響することが予想されます。


12月6日(金)、JICA緒方貞子平和開発研究所は、JICA緒方研究所ナレッジフォーラム「気候変動が進行する世界で食料安全保障を実現するための水資源戦略」を開催し、水分野の研究者として世界的に著名な東京大学大学院の沖大幹教授に講演いただきます。国際農研の白鳥佐紀子プロジェクトリーダーもパネリストとして参加します。ご興味のある方はぜひご参加ください。詳しくはこちらをご覧ください。

 

参考文献

Allan, John Anthony. “Fortunately There are Substitutes for Water, Otherwise our Hydro-Political Futures Would be Impossible.” In Priorities for Water Resources Allocation and Management, 13–26. London: Overseas Development Administration, 1993.

Chapagain, Ashok K., and Arjen Y. Hoekstra. "Water footprints of nations." 2004.


環境省 よく分かる!バーチャルウォーターについて https://www.env.go.jp/water/virtual_water/#main  accessed on Dec 3, 2024.

JICA緒方研究所ナレッジフォーラム ストックホルム水大賞・沖大幹教授登壇「気候変動が進行する世界で食料安全保障を実現するための水資源戦略」 https://www.jica.go.jp/jica_ri/news/event/1553927_23518.html accessed on Dec 3, 2024.

(文責:情報広報室 白鳥佐紀子)
 

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