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265. サトウキビ白葉病の防除技術マニュアル

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病害虫は農業生産上の重大な減収要因の一つであり、作物・畜産生産量の減少は、農民への経済ロスにとどまらず、バリューチェーンを通じ、セクター・経済全体に影響を及ぼします。2008年から2018年までに、病害虫は98憶ドル相当(全災害の9%相当)の経済喪失を与えたとされます。

農作物の生産を阻害する病害虫の中には、国境を越えて移動して被害をもたらすものがあります。広域に移動分散する病害虫は一つの国の防除対応だけでは不十分で、周辺国とも連携して防除に取り組む必要があります。 国際農研は越境性病害虫の国際共同研究に取り組み、このPick Upでも、これまでサバクトビバッタツマジロクサヨトウイネウンカダイズさび病イネいもち病の研究について紹介してきました。

今回はサトウキビ白葉病の防除技術開発について報告します。サトウキビ白葉病は、世界第2位の砂糖輸出国であるタイを中心とするアジア地域で大きな被害を出す、サトウキビの重要な虫媒伝染病です。病原体はファイトプラズマで、葉が白化する症状を経て枯死します(写真)。現在のところ、感染後の有効な治療法はありません。激発地では、罹病率がほぼ100%に達し収穫が不可能になる圃場も見られます。タイは日本にとってオーストラリアに次ぐ第二の砂糖輸入先国であり、病害虫の影響は日本への砂糖供給にも影響を及ぼす可能性があります。  

国際農研は、タイの共同研究機関とサトウキビ白葉病の防除技術を開発するための研究を行ってきました。今回、これまでの成果をタイ語版・英語版のマニュアルとしてとりまとめ、サトウキビ・砂糖委員会事務局から発行しました。本マニュアルに記載された技術の一部は、既に現地の製糖工場および生産者グループにより利用されています。本マニュアルの刊行により本技術がさらに普及することで、タイを中心とするアジア諸国でサトウキビ白葉病の被害が減少することが期待されます。
 


参考文献

タイ語版へのリンク(サトウキビ・砂糖委員会事務局のサイトへ移動します):
http://www.ocsb.go.th/upload/journal/fileupload/12685-6745.pdf

英語版へのリンク(サトウキビ・砂糖委員会事務局のサイトへ移動します):
http://www.ocsb.go.th/upload/journal/fileupload/12686-3399.pdf

(文責:生産環境・畜産領域 小堀陽一)

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