研究成果情報 - アフリカ

国際農林水産業研究センターにおける研究成果のうち、成果が特に顕著で、広く利用を図ることが望ましいと考えられる成果を要約してご紹介しています。

各年度の国際農林水産業研究成果情報

  • スーダンサバンナの土壌型を考慮した収量・純収益を最大化するソルガム栽培法(2025)
    サブサハラアフリカ最大のソルガム生産地であるスーダンサバンナでは、土壌型がソルガム収量に大きく影響するが、各国の栽培指針では未だ土壌型が考慮されていない。当該地域で優占する3つの土壌型ごとに、ソルガムの収量と施肥による純収益(施肥で増加する収益と費用の差)を最大化する窒素施肥量、播種密度、品種の組み合わせを「最適な栽培法」として示し、これにより土壌型に応じた栽培指針の見直しが可能となる。最適な栽培法の経済的頑健性も土壌型で異なり、土壌型によっては施肥が経済的な損失をもたらす可能性がある。
  • 乾燥と過湿に強いササゲ遺伝資源の発見とその根の形態変化による土壌水分適応(2025)
    西アフリカの主要なマメ科作物であるササゲの栽培種と祖先野生種を含む99系統の特性評価により、土壌の乾燥ストレスと過湿ストレスの両条件下で耐性を示す10系統を明らかにした。これらの系統は過湿条件で根の通気組織を増やして酸素不足を回避し、乾燥では水の通り道となる通導組織の比率を高めるといった柔軟な根の形態変化を示した。同定した系統群は今後、気候変動による極端な水分変動に強いササゲ品種開発への活用が期待される。
  • ICP全波長スペクトルの深層学習による多項目同時測定可能な土壌診断法(2025)
    現在の土壌診断は費用が高く、特に開発途上地域では土壌診断に基づく技術適用が困難な状況である。これを解決するため、これまでに国際農研が取得したアフリカ・アジアを中心とした約2,000試料の土壌分析結果と、ICP(誘導結合型プラズマ発光分光分析装置)で得られる全波長スペクトルを深層学習し、土壌診断結果の精度を検証する。本法では1つの抽出液で主要な12の土壌診断項目を高精度に評価でき、分析に要する機器や試薬、分析時間を大幅に削減できるため、迅速かつ安価な土壌診断が可能となる。
  • リン欠乏水田への家畜ふん堆肥の選択的施用が水稲収量を向上させる(2025)
    サブサハラアフリカの小規模農家にとって、自給可能な家畜ふん堆肥(FYM)を有効に活用する稲作技術の確立が重要である。FYMはリン欠乏水田で特に高い増収効果を示し、窒素肥料と併用することで最大 3.1 t ha-1 の水稲増収が得られる。本成果は、土壌のリン欠乏程度に応じたFYM活用により、化学肥料への依存を抑えつつ、効率的なコメ増産につながることを示す。
  • クエン酸輸送体FRDL1の欠損がもたらすイネの鉄過剰ストレス耐性(2025)
    イネ地上部への鉄蓄積の抑制により、アフリカや東南アジアで発生する鉄過剰ストレスへの耐性が上昇することが知られているが、関連するメカニズムは明らかになっていない。水稲根の導管で主に発現するクエン酸輸送体FRDL1の欠損により、鉄過剰条件において根から地上部への鉄の輸送が制限され、葉身における鉄の蓄積と褐変症状の形成が抑えられる。根におけるFRDL1の働きを制御することで、鉄過剰ストレス耐性が向上したイネの育種素材開発が期待される。
  • アフリカの灌漑地区に向けた水資源利用効率化技術ガイドライン(2025)
    アフリカの灌漑地区では水利施設の機能劣化や不適切な水管理により計画面積どおりに水配分がなされない事例が散見される。本ガイドラインはタンザニア・ガーナの灌漑地区を対象にその要因を分析し、実証可能な対策を現地で検証したものをとりまとめる。水利施設では分水工と水路の漏水対策や流況改善、圃場においては浸透抑制・排水改善、水管理、節水栽培、循環灌漑を示す。これらの一部技術をローアモシ地区に適用することで、計画灌漑面積の152%まで灌漑面積を拡大できる可能性がある。
  • アジアイネとアフリカイネ種間の雑種不稔性は4倍体化により軽減できる(2024)

    アフリカイネはアジアイネの育種のための重要な遺伝資源であるが、両種間のF1雑種は花粉が不稔となり種子が実らず、両種間の遺伝子交換は難しい。花粉不稔の原因は雑種不稔遺伝子座と呼ばれる遺伝子座群であるが、このうち特定のメカニズムをもつ不稔遺伝子座の不稔効果は、F1雑種の全ゲノムを倍加(4倍体化)させることで軽減できる。4倍体化してアジアイネーアフリカイネ種間の遺伝子交換を加速させることで、両種の形質を組み合わせた多様な雑種を育成できる可能性がある。

  • 含水比に基づくリン施肥診断に有効な水田土壌のリン吸着能の簡易推定法(2023)
    リン肥料の施肥効率にかかわる水田土壌のリン吸着能は、密閉容器内で飽和食塩水(飽和塩化ナトリウム水溶液)とともに1週間静置した土壌の含水比によって高い精度と再現性で推定できる。危険な試薬や高価な機器を要する化学分析を必要としないため、分析環境が十分に整わないサブサハラアフリカなどにおいても、リン肥料を優先的に施用する圃場を選別するために利用できる。
  • 水稲へのリン浸漬処理P-dippingは冠水害の回避にも有効(2023)
    リン欠乏水田で高い施肥効果を発揮するリン浸漬処理P-dippingは、水稲の生育日数を短縮して低温ストレスリスクを軽減するだけではなく、初期生育を改善するため、突発的な水位上昇にともなう冠水害の回避にも有効である。さらに、P-dippingと組み合わせることで、窒素施肥の効果が大きくなることから、P-dippingは様々な圃場環境や窒素施肥に効果的な技術である。
  • 水稲へのリン浸漬処理P-dippingは4.5~6.5葉程度の苗を用いると増収効果が高い(2023)
    水稲の移植時に、リン肥料を混ぜた泥を苗の根に付着させるリン浸漬処理P-dippingでは、葉齢が4.5~6.5葉程度の苗を用いることで、最も高い増収効果が得られる。葉齢が4.5程度より小さい場合には苗の根に付着するリン量が少なく、6.5程度より大きい場合には肥料焼けにともなう苗の植え傷みが生じることで、P-dippingによる増収効果が低くなる。
  • 有効土層の薄い土壌型プリンソソルにおけるソルガムの特異な施肥応答(2023)
    西アフリカには作物が根を張れる土層(有効土層)の厚さが50 cm以下で、水分保持能が低いプリンソソルと呼ばれる特殊な土壌が広く分布する。このプリンソソルでは、他の土壌型とは異なり、土壌水分の不足が主穀であるソルガムの収量を制限しており、さらに、最適な施肥量も有効土層が25 cmのプリンソソルでは他の土壌型と異なる。現在西アフリカで再整備が進んでいるソルガムの栽培指針において、プリンソソルとそれ以外の土壌型を区別する必要がある。
  • 土壌型プリンソソルにおけるササゲ栽培では施肥と密植による増収効果が高い(2023)
    西アフリカのスーダンサバンナでは2つの土壌型(リキシソルとプリンソソル)の圃場が農家内で混在することが多い。プリンソソルは低肥沃であるが、施肥や密植によるササゲの増収効果がリキシソルよりも高く、両者を組み合わせるとより効果が高い。施肥を元肥と追肥に分けた場合、同量を元肥のみで施用する場合よりも収量が増加する。農家内で土壌が混在する場合、プリンソソルへ施肥や密植を優先することで総収穫量の増加が見込める。
  • スーダンサバンナの栽培データを用いて気候変動がササゲ栽培に及ぼす影響を推定(2023)
    西アフリカのスーダンサバンナにおける詳細な栽培データを基にしたササゲの収量予測では、気候変動により今後30年間で降雨量が増すため、保水性の高い土壌(リキシソル)では多雨年にササゲの過湿害が深刻化する。一方、保水性の低い土壌(プリンソソル)では、引き続き干ばつが主な収量低下リスクとなる。半乾燥地であっても土壌型に応じて、干ばつだけでなく過湿害への対策が必要である。
  • ヤムイモの収量は個体の性別と開花日に強く影響を受ける(2022)

    ヤムイモは雄株と雌株に分かれるが、開花日がイモ肥大期よりも早い場合には遅い場合と比べてイモ収量が高くなり、さらにその増加程度は雄株よりも雌株で大きい。雌株や開花日が早い系統を交配親に用いるとともに、そのような系統を選抜することで、収量改善に向けた品種育成を効率的に進めることができる。

  • 根圏土壌を加えたリン鉱石添加堆肥は化学肥料と同等にソルガム収量を増加させる(2022)

    サブサハラアフリカの農業生産性を制限している土壌の低いリン肥沃度の改善に向けた新規有機肥料として、ソルガム残渣にリン鉱石と根圏土壌を加えて堆肥化するとリン鉱石土壌添加堆肥が得られる。このリン鉱石土壌添加堆肥は、ソルガム栽培土壌の生物性を高め、既存の化学肥料と同等の増収効果をもたらす。

  • 西アフリカの群生相化したサバクトビバッタは産卵直前に雌雄が合流(2021)
    アフリカで大発生するサバクトビバッタの群生相化した成虫は、雌雄がそれぞれの性に偏った集団を形成しているが、日中、産卵直前のメスがオスの集団に飛来、交尾し、夜間に集団で産卵している。この行動特性を応用することで、集団形成の時間と場所を特定でき、使用する農薬の量の軽減が期待できる。
  • メタ解析により明らかになったアフリカ陸稲への施肥効果(2021)
    アフリカにおける主要陸稲品種NERICA4の栽培試験データをメタ解析に供し、化学肥料の増収効果を環境要因に応じて定量的に評価する。結果は粘土含量が異なる土壌間で、降水量や窒素施用による異なる効果を示し、アフリカ陸稲栽培での施肥設計の指針となる。
  • トウジンビエとササゲの4列配置間作、ローテーションと栽植密度の組合せにより作物バイオマスとトウジンビエ収量は増加する(2010)

    トウジンビエ(栽植密度6300本/ha)とササゲ(栽植密度6300~2000本/ha)を4列配置間作で配置し、両作物をローテーションすることで、合計バイオマスは4割、トウジンビエ収量は5割増加する。

  • 西アフリカサヘル地域におけるMother-Baby手法を用いた肥沃度管理技術の普及可能性の評価(2010)

    サヘル地域で普及確度の高い技術は、トウジンビエとササゲの間作、トウジンビエ脱穀残さ、家畜糞尿の利用や化学肥料との併用である。普及可能性は技術の有効性と投入資材の入手しやすさによって決定される。

  • 西アフリカサバンナ低湿地における雑草データベースの構築(2010)

    アフリカ氾濫原低地のイネの収量向上に効果的な雑草防除体系を確立するための基盤情報として、低湿地に生育する雑草を同定・分類するとともに、さく葉標本と生植物の画像を作成し、データベース「Plants in lowland savanna of West Africa」を構築した。