サトウキビとエリアンサスの属間雑種はサトウキビより葉の水利用効率が優れる
背景・ねらい
サトウキビ (Saccharum spp.) の近縁属遺伝資源エリアンサス (Erianthus arundinaceus) は、属間交配によるサトウキビの耐乾性改良への貢献が期待されている。これまでに、エリアンサスの耐乾性関連形質として、優れた根系形成能(令和4年度国際農林水産業研究成果情報A09「サトウキビとエリアンサスの属間雑種はサトウキビより窒素利用効率が優れる」)、葉身のガス交換特性、代謝物変動(令和6年度国際農林水産業研究成果情報C05「エリアンサスの高い水利用効率と関連する葉身代謝物の蓄積」)が報告されてきた。葉のガス交換特性のうち、光合成速度を蒸散指標の気孔コンダクタンスで除した水利用効率は耐乾性指標の一つと考えられる。これまでに、サトウキビとエリアンサスの属間雑種の根系形成能については報告があるが、葉身特性(ガス交換特性、形態特性)については報告がなく、属間交配によるサトウキビの葉身特性の改良可能性は明らかでない。国際農研 熱帯・島嶼研究拠点のガラス温室において、ポット条件で乾燥区、湿潤区を設け、サトウキビ品種(NiF8)、エリアンサス系統(JW630)およびこれらを親とする属間雑種F1系統(J16-77[NiF8 x JW630])の葉身ガス交換特性および形態特性、乾物分配特性を調査し、属間交配によるこれら特性の改良可能性を検証する。
成果の内容・特徴
- 強光条件では有意ではないものの、サトウキビに比べて、エリアンサスは土壌水分条件にかかわらず水利用効率が高い(図1)。
- 水利用効率の系統間差は、ガス交換測定時の光強度が強光条件(光合成光量子束密度 2,000 µmol m-2 s-1)に比べて弱光条件(同 500 µmol m-2 s-1)で、顕著になる(図1)。
- エリアンサスはサトウキビに比べ葉の裏面の気孔密度が低く、気孔密度の表裏比が高く、維管束間距離が長い(表1)。これらの差は遺伝的要因が大きい。
- サトウキビは茎への乾物分配が大きく、エリアンサスでは葉および根への分配が多い(図2)。
- 属間雑種の水利用効率および気孔密度は、エリアンサス親と同等か近い値を示す(図1、表1)。一方、属間雑種は茎への乾物分配が大きく、乾物分配はサトウキビ親に近い傾向を示す(図2)。
- 属間交配により、耐乾性に関連する葉身特性をエリアンサス親から、収量性に関連する茎への乾物分配特性をサトウキビ親から受け継ぎ、両親の特徴を備えた雑種を作出可能である。
成果の活用面・留意点
- サトウキビとエリアンサスとの属間雑種F1は、地上部の有用な形質を有し、サトウキビの耐乾性改良に貢献する。
- 根域制限のあるポット条件で生育初期に焦点を当てた結果であるため、特に根系形成能については実際の圃場条件での結果も確認する必要がある。
- 供試した属間雑種F1は収穫期の糖度が低いため、製糖用品種として活用するためには、サトウキビ品種の戻し交配による糖含率の改良が必要である。
- エリアンサスは遺伝的に異なる系統群の存在が知られており、本研究と異なる生理・形態を示す系統が存在する可能性がある。
- 今後、葉身特性(ガス交換特性、形態特性)を指標とした耐乾性系統の選抜が可能か、雑種集団を用いて検証することで、耐乾性関連の遺伝マーカー開発による耐乾性育種の効率化が期待できる。
具体的データ
- 分類
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研究
- 研究プロジェクト
- プログラム名
- 予算区分
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交付金 » 第5期 » 情報プログラム » 熱帯作物資源
- 研究期間
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2021~2023年度
- 研究担当者
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寳川 拓生 ( 熱帯・島嶼研究拠点 )
ORCID ID0000-0002-6238-1078科研費研究者番号: 70851260寺島 義文 ( 熱帯・島嶼研究拠点 )
岡本 健 ( 熱帯・島嶼研究拠点 )
- ほか
- 発表論文等
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Takaragawa et al. (2025) Frontiers in Plant Science 16: 1649112https://doi.org/10.3389/fpls.2025.1649112
- 日本語PDF
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2025_C02_ja.pdf456.59 KB
※ 研究担当者の所属は、研究実施当時のものです。