研究成果情報 - アジア
国際農林水産業研究センターにおける研究成果のうち、成果が特に顕著で、広く利用を図ることが望ましいと考えられる成果を要約してご紹介しています。
- 適切なリンの肥培管理により黒米の生産性と品質を両立できる(2023)リンの供給力が低い熱帯地域の土壌では、リン施肥によって黒米の収量が向上するが、過剰なリン施肥は抗酸化力を持つフラボノイド類量を減少させ、玄米表面色の黒色を薄くする。適切なリンの肥培管理により、付加価値の高い黒米の安定生産が可能になる。
- アジアの伝統野菜ヒユナの多様性の解明と育種基盤の構築(2022)
アジアで伝統的な葉物野菜として利用されるヒユナの遺伝的多様性を解析し、品種育成に有用な5,638個の一塩基多型マーカーとコアコレクションを作出した。これらの成果を利用することにより、栄養価・食味・収量などが改善された新しいヒユナ品種の開発が期待される。
- 水田でのメタン発酵消化液の施用によるメタン排出促進は間断灌漑で相殺できる(2021)ベトナム・メコンデルタの水稲三期作において、メタン発酵消化液の肥料利用と間断灌漑の組み合わせは、現地慣行である化学肥料と常時湛水の組み合わせと比較して、水稲収量を減らすことなくメタン排出量を11~13%削減できる。
- オイルパーム古木の慣例的農地還元は土壌環境に負の影響を及ぼす(2021)オイルパーム古木の慣例的農地還元による影響を確認するために、パーム古木繊維を混合した土壌で植物栽培を行った結果、生育不良や土壌に糸状菌Trichocladium属菌が有意に増殖する。パーム古木繊維の直接的な農地還元は土壌環境に負の影響を与える。
- フタバガキ科熱帯林業樹種Shorea leprosulaの茎の成長と新葉の関係(2021)フタバガキ科樹木のS. leprosulaでは、茎は葉と同調して断続的に成長し、葉の切除により茎の伸長が顕著に抑制される。葉の成長は茎の伸長の制御要因となっており、その制御機構の解明は、木材生産や適切なサイズの苗木の安定供給に役立つことが期待される。
- 生殖細胞凍結保存技術によりクルマエビ類の遺伝的多様性保全を図る(2021)卵の凍結保存技術が確立されていない魚介類において、生殖細胞の凍結保存は、全遺伝情報を保存できる唯一の手法となっている。開発した水産重要種クルマエビ類2種における生殖細胞凍結保存技術は、水生無脊椎動物で初の生殖細胞凍結保存技術である。
- めん物性に関与するグルテニン蛋白質遺伝子Glu-D1fのアジアにおける地理的分布と日本への小麦伝播経路(2004)
良いめん物性に関与するグルテニン蛋白質遺伝子Glu-D1f のアジア地域における地理的分布から、日本への伝播経路は、中国からの直接伝播ルート(めんロード)と朝鮮半島経由の2つの伝播ルートが考えられた。
- 食料需給モデルを用いた食料安全保障のシミュレーション分析(1999)
経済協力開発機構(OECD)が開発した食料需給モデルを拡充・改良して実施したアジアの低所得食料輸入地域に関するシミュレーション分析によれば、輸出国での不作、輸入国での為替変動が起こった場合、自由貿易政策の選択が食料安全保障に悪影響を及ぼす可能性がある。
- 東南アジア産オニテナガエビ(Macrobrachium rosenbergii)の成熟・産卵・脱皮過程の解明(1996)
東南アジアでは重要な養殖対象種である淡水産オニテナガエビの成熟・産卵・脱皮過程の内分泌学的要因との関係を検討し、脱皮ホルモンであるエクジステロイドおよび昆虫で変態を制御する幼若ホルモンはエビ類にも存在し、脱皮だけでなく成熟過程にも関与することを明らかにした。