東南アジア産オニテナガエビ(Macrobrachium rosenbergii)の成熟・産卵・脱皮過程の解明

国名
アジア
要約

東南アジアでは重要な養殖対象種である淡水産オニテナガエビ成熟産卵脱皮過程内分泌学的要因との関係を検討し、脱皮ホルモンであるエクジステロイドおよび昆虫で変態を制御する幼若ホルモンはエビ類にも存在し、脱皮だけでなく成熟過程にも関与することを明らかにした。

背景・ねらい

   アジアの開発途上地域では、クルマエビ科およびテナガエビ科エビ類は重要な増養対象種として市場価値が高いために、エビ類の安定的な養殖技術の開発が強く望まれている。エビ類の計画的の養殖には人工種苗生産による稚エビの安定供給が不可欠で、このためには、親エビの成熟・産卵過程の解明を通じた産卵制御技術や稚エビの飼育技術の確立が急務である。しかし、オニテナガエビの採卵では眼柄切除等による成熟促進等、経験的な手法が行われているが、親エビの養成と採卵技術は確立されていない。そこで採卵技術の確立に資する基礎的知見を得るため成熟・産卵・脱皮過程と各種ホルモンとの関係を検討した。

成果の内容・特徴

  1. オニテナガエビの卵巣発達に伴い、活性型エクジステロイドが血液を通じて卵巣内に移行・蓄積され、産卵後にはこれらの母親由来のエクジステロイドが初期の胚発生のために利用される。雌親エビは卵を約18日間抱卵し、約10日目に、胚体の複眼や心臓等が形成され(図1)、その段階で減少したエクジステロイドが急激に上昇して(図2)、体形成がさらに進行した。
  2. エビ類における幼若ホルモンの有無と生理学的意義を検討し、幼若ホルモン類似物質であるメチルファーネソイト(MF)が存在し、脱皮周期に伴い、変動することを確認した(図3)。昆虫では幼若ホルモンは幼虫の変態だけでなく、成虫の成熟にも関与しているが、エビでは、MFは成熟現象に比べて脱皮に相対的に強く関与していることを明らかにした。
  3. エビの眼柄に脱皮制御ホルモンおよび卵黄形成抑制ホルモンが存在する。眼柄切除により、抑制が解除され、脱皮および成熟が誘導される。養殖現場においては種苗生産のために、眼柄切除がしばしば実施される。雄および稚エビは卵黄形成の能力がないが、本研究で眼柄を切除したところ、初期の卵黄タンパクの合成が誘導された。しかしこの卵黄タンパクは、通常の成雌と異なったため成雌のみに未知因子が存在し、さらに卵黄形成を促進すると示唆された。この因子は卵巣に由来すると考えられた。

成果の活用面・留意点

   得られた研究成果を基礎として、オニテナガエビの効果的な産卵制御技術を早急に確立する必要がある。また、国際農林水産業研究センターがメコンデルタにおいてカントー大学と実施している国際共同研究プロジェクト「メコンデルタ複合ファーミングシステム」の研究推進に活用できる。

具体的データ

  1.  

    図1 抱卵したオニテナガエビ卵の発生段階
    /p>
  2.  

    図2 胚発生に伴うエクジステロイドの変化
  3.  

    図3 REPRODUCTIVE MOLT(成熟が伴う脱皮周期)におけるメチルファーネソイト(MF)の検出
所属

国際農研 水産部

分類

研究

予算区分
経常
研究課題

クルマエビ科およびテナガエビ科エビ類の成熟・産卵・脱皮過程の解明

研究期間

平成7年~10年

研究担当者

WILDER Marcy Nicole ( 水産部 )

TUAN Nguyen Anh ( カントー大学 )

PHUONG Nguyen Thanh ( カントー大学 )

OANH Dang Thi Hoang ( カントー大学 )

PHU Truong Quoc ( カントー大学 )

ほか
発表論文等

Wilder. M. N. et al. (1995) The presence of 20-hydroxyecdysonoic acid and ecdysonoic acid in the eggs of the giant freshwater prawn Macrobrachium rosenbergii. Fisheries Science, 61: 101-106.

Wilder, M.N. and Aida, K. (1995) Crustacean ecdysteroids and juvenoids: Chemistry and physiological roles in two species of prawn, Macrobrachium rosenbergii and Penaeus japonicus. Israeli Journal of Aquaculture, 43: 129-136.

日本語PDF

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