アジアの伝統野菜ヒユナの多様性の解明と育種基盤の構築
アジアで伝統的な葉物野菜として利用されるヒユナの遺伝的多様性を解析し、品種育成に有用な5,638個の一塩基多型マーカーとコアコレクションを作出した。これらの成果を利用することにより、栄養価・食味・収量などが改善された新しいヒユナ品種の開発が期待される。
背景・ねらい
アジア地域の伝統的な葉物野菜として利用されるヒユナ(Amaranthus tricolor L.)などの在来種は、孤児作物と呼ばれ、開発途上地域における貧困層の栄養を下支えしており、かつ少ないながらも農家の現金収入となっているが、先進国での需要の低さから、育種研究は進んでおらず、積極的な品種改良も十分に行われていない。
そこで本研究では、開発途上地域の健康増進や所得向上に貢献するための育種の基盤構築を目的に、ヒユナ遺伝資源の遺伝的多様性を解明し、品種育種に有用な一塩基多型マーカーとコアコレクション*の作出を試みる。
*コアコレクション:保存遺伝資源の中から選定した代表的な品種・系統セットであり、遺伝的多様性を維持しながら遺伝資源のサイズを全体の30%以下に縮小した集団である。
成果の内容・特徴
- 世界蔬菜センター(台湾)と米国農務省のジーンバンクで保存されているヒユナ遺伝資源465系統(図1) を用いて、ゲノム全体にわたる一塩基多型に基づいて系統樹解析、集団構造解析及び主座標分析を実施することにより、遺伝的多様性を評価する。
- 合計10,509個の一塩基多型が見出され、同定された440系統において欠損のない5,638個の一塩基多型データ(マーカーセット)は、有用形質同定のための遺伝子マーカーとして利用可能である。
- 一塩基多型データを用いた集団構造解析及び主座標分析により、ヒユナ遺伝資源377系統は4つの亜集団(Q1~Q4)と中間型に分類される(図2)。Q1とQ2は、それぞれインドとバングラデシュを起源とする遺伝資源を多く含み、Q3は東アジア、特に中国を起源とする遺伝資源を多く含む (図3)。
- 本研究で同定された一塩基多型データを用いて、ヒユナ遺伝資源の遺伝的多様性を網羅する105系統のコアコレクションを作出した。
成果の活用面・留意点
- 本研究で作出されたコアコレクションは、世界蔬菜センター (https://avrdc.org) から入手可能である。
- 本研究で得られた一塩基多型情報・マーカーとコアコレクションを利用したマーカー選抜育種により、栄養価・食味・収量などの向上に向けた育種技術および新品種の開発が期待される。
具体的データ
- 分類
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研究
- 研究プロジェクト
- プログラム名
- 予算区分
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交付金
- 科研費
- 研究期間
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2019~2022年度
- 研究担当者
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星川 健 ( 生物資源・利用領域 )
科研費研究者番号: 70634715吉岡 洋輔 ( 筑波大学 )
白澤 健太 ( かずさDNA研究所 )
ORCID ID0000-0001-7880-6221科研費研究者番号: 60527026 - ほか
- 発表論文等
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Hoshikawa et al. (2022) Scientia Horticulturae 307: 111428https://doi.org/10.1016/j.scienta.2022.111428
- 日本語PDF
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※ 研究担当者の所属は、研究実施当時のものです。