日本在来サトウキビ野生種の遺伝的特異性と遺伝資源としての価値
関連プロジェクト
熱帯作物資源
国名
日本
要約
日本のサトウキビ野生種遺伝資源は、北東アジア型に分類され、インドやタイなどの大陸アジア型やインドネシアなどの島嶼アジア型と遺伝的に異なる。世界のサトウキビ製糖品種の遺伝的背景には、大陸アジア型や島嶼アジア型野生種のゲノムは含まれているが、北東アジア型のゲノムはほとんど含まれておらず、わずかに日本および中国の品種で確認されるのみである。そのため、幅広い遺伝的多様性の利用が求められているサトウキビ育種において、日本のサトウキビ野生種や製糖品種は世界的に重要な遺伝資源となる。
背景・ねらい
サトウキビ (Saccharum L.)は、砂糖やバイオエタノール生産に加え、バイオ化学製品やバガス(繊維)を利用した電力生産にも利用される世界の食料・エネルギー生産、脱石油社会の実現に向けた重要作物である。一方で、気候変動による生産の不安定化が懸念される中、栽培品種や育種素材の遺伝的多様性の狭さに起因する育種改良の停滞が課題となっている。この打破に向けて、未利用野生遺伝資源の育種利用による遺伝的多様性の拡大と有用特性の導入が不可欠となっている。サトウキビ野生種 (Saccharum spontaneum L.)は、アジアの熱帯・亜熱帯域の大陸、島嶼地域に広く分布し、様々な有用形質をもつ野生遺伝資源であり、現在世界中で利用されている製糖品種は、サトウキビ栽培起源種 (S. officinarum)と野生種との種間雑種である。サトウキビ育種における遺伝的多様性の拡大や有用特性の導入に向けて、これまで育種に利用されていない野生種の探索・利用が重要であるが、これまで世界の製糖品種の遺伝的背景にどのような野生種が貢献してきたかに関する詳細な情報がないことが課題であった。
そこで本研究では、世界各地域で収集されたサトウキビ野生種を含むサトウキビ遺伝資源の遺伝的多様性を解析するとともに、現在、世界中で利用されている製糖品種の遺伝的背景に各地域の野生種のゲノムがどの程度含まれているかを明らかにすることで、将来のサトウキビ育種の遺伝的多様性拡大に貢献する未利用野生遺伝資源の基盤情報を提供する。
成果の内容・特徴
- 本解析の対象は、日本を含む世界各地域のサトウキビ野生種135系統(日本在来野生種はS8、S15、JW49、JW548の4系統)、S. robustum 45系統、S. barberi 15系統、S. sinense 6系統、S. maximum 8系統、および製糖品種96品種(日本育成品種はNiF8、Ni9、NiTn18、NiN24、NiH25、Ni27、Ni28の7品種)等、合計390品種・系統で構成される。
- 世界のサトウキビ野生種は、インドやタイなどに分布する「大陸アジア型」、インドネシアやオセアニアに分布する「島嶼アジア型」、日本や中国、台湾に分布する「北東アジア型」に分類できる(図1、2)。
- 日本のサトウキビ野生種として沖縄で収集されたJW49は、S. officinarumのゲノムをもつため、サトウキビと野生種との種間雑種である可能性が高い(図1)。
- 世界で栽培されている近代サトウキビ品種の遺伝的背景には、大陸アジア型や島嶼アジア型野生種のゲノムが多く含まれているが、北東アジア型野生種のゲノムはほとんど含まれておらず、わずかに日本および中国の品種で確認されるのみである(図3)。
- 北東アジア型に分類される日本在来の野生種およびそれらゲノムをもつ日本育成品種は、今後のサトウキビの遺伝的多様性の拡大、新たな有用特性の導入に向けた重要な遺伝資源となる。
成果の活用面・留意点
- 本成果は、世界の製糖品種の成立にどのような野生種が貢献してきたかを明らかにした世界初の成果であり、世界のサトウキビ育種において、日本在来野生種や日本育成品種の遺伝資源としての重要性を示す基盤情報として利用できる。
- 今回の解析に供試していない日本在来野生種遺伝資源については、北東アジア型に分類されるかどうか遺伝子型の確認が必要である。
- 本研究は、フランス農業開発研究国際協力センターが中心となる国際研究グループにより実施した。
具体的データ
- 分類
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研究
- 研究プロジェクト
- プログラム名
- 予算区分
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交付金 » 第5期 » 情報プログラム » 熱帯作物資源
- 研究期間
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2022~2025年度
- 研究担当者
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寺島 義文 ( 熱帯・島嶼研究拠点 )
- ほか
- 発表論文等
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Garsmeur et al. (2025) Cell 188(25): 7252-7266https://doi.org/10.1016/j.cell.2025.09.017
- 日本語PDF
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2025_C03_ja.pdf736.22 KB
※ 研究担当者の所属は、研究実施当時のものです。