サトウキビにおけるスクロースリン酸シンターゼ(SPS)遺伝子の識別法

要約

サトウキビ光合成および糖蓄積に関与している酵素スクロースリン酸シンターゼSPS)の遺伝子は、トウモロコシのSPS遺伝子の一部を用いたサザンブロット法により識別できる。

背景・ねらい

   スクロースリン酸シンターゼ(SPS)は、光合成系における転流スクロースを合成する酵素として注目されている。サトウキビでは、茎でのスクロースの合成・貯蔵に関わっており、スクロース含有率に関係する重要な酵素と考えられている。そこで、本研究では品種育成に役立てるため、サザンブロット法によってSPS遺伝子を識別する方法を開発する。

成果の内容・特徴

  1. トウモロコシで単離されているSPS遺伝子を切断して4つのプローブとし、サトウキビのゲノムDNAでサザンハイブリダイゼーションを実施すると、いずれのプローブでもバンドが検出できる。(図1-a)
  2. 制限酵素 XbaⅠで断片化したゲノムDNAでは、4つのプローブで同じ泳動位置に共通したバンドがみられ、バンドを呈するDNA断片は4つのプローブと一致する部分を含んでいる。また、制限酵素HindⅢまたは SacⅠとC断片プローブを組み合わせた検出では、ひとつのバンドしかみられず、バンドを呈するDNAはHindⅢおよび SacⅠのそれぞれに2つずつの共通した制限酵素認識配列を有している。これらのことから検出されるバンドはSPS遺伝子であると考えられる。(図1-b,c)
  3. サトウキビのSPS遺伝子は、3'末端外側の異なる位置にSacⅠ認識配列を有していると考えられ、ゲノムDNAを制限酵素 SacⅠで切断し、Dプローブを用いて検出するとSPS遺伝子近傍の変異が識別できる。この方法で検出すると品種間で異なるバンドパターンがみられる。ただし、下位に共通してみられるバンドは、SPS遺伝子に共通した断片に由来するバンドで、特定の遺伝子を示すものではない。(図1-c,d)

成果の活用面・留意点

  1. 遺伝資源の評価・利用に活用できる。
  2. 新たなSPS遺伝子のスクリーニングに利用できる。
  3. トウモロコシのSPS遺伝子とは相同性の低いSPS遺伝子が知られており、検出できないSPS遺伝子があることに注意する必要がある。

具体的データ

  1. 図1 サトウキビ高糖性遺伝子の解析
Affiliation

国際農研 沖縄支所

分類

研究

予算区分
経常
研究課題

サトウキビ高糖性遺伝子の解析

研究期間

平成12年度(9~11年度)

研究担当者

寺内 方克 ( 沖縄支所 )

齋藤 ( 九州農業試験場 )

宮崎 ( 科学技術振興事業団 )

木村 貴志 ( 九州農業試験場 )

出田 ( 沖縄支所 )

松岡 ( 沖縄支所 )

ほか
発表論文等

Terauchi T., M. Quintana, C. Bangwaek and Matsuoka M. (2000) Gene analysis of sucrose accumulation related enzyme. 6th ISSCT Breeding Workshop Abstracts: 8.

日本語PDF

2000_30_A3_ja.pdf774.48 KB

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