乾燥と過湿に強いササゲ遺伝資源の発見とその根の形態変化による土壌水分適応
背景・ねらい
西アフリカの乾燥サバンナでは、降雨に依存した小規模農業が中心で、気候変動の影響を強く受ける。近年は降雨の変動が拡大し、干ばつによる減収に加えて、極端な降雨後の滞水・土壌過湿が畑作でも起こりやすくなっている。土壌過湿により、ササゲなどのマメ科作物では根域の酸素不足による生育低下が新たなリスクとして顕在化しており(令和5年度国際農林水産業研究成果情報B14「スーダンサバンナの栽培データを⽤いて気候変動がササゲ栽培に及ぼす影響を推定」)、幅広い土壌水分条件に適応できる品種の開発が急務である。しかし、乾燥と過湿では必要とされる耐性機構が異なるため、両耐性の同時付与は難しいとされてきた。一方、自然界では土壌水分が極端に変動する場面があり、祖先野生種には水環境の変動に追随する適応性が残っていると考えられる。
本研究では、国際熱帯農業研究所 (IITA)との連携のもと、栽培種と祖先野生種*を含むササゲ遺伝資源99系統を対象に、乾燥・過湿の両条件で複数の生育・生理指標を組み合わせて耐性を包括的に評価し、両ストレスに強い遺伝資源の探索と、その基盤となる根の形態応答の解明を目的とする。
*祖先野生種 : ササゲの栽培種が成立する過程において、直接的な進化的起源となった野生種。栽培種と交雑が可能であるため、育種材料としての活用が期待されている。
成果の内容・特徴
- 幅広い環境から採取されたササゲ祖先野生種45系統に、栽培ササゲのコア・コレクションを中心とした54系統を加えた計99系統を対象に、乾燥条件ではSPAD値**とクロロフィル蛍光、過湿条件ではSPAD値と地上部生長量を用いて総合的に評価した。その結果、両ストレスに強い10系統が明らかとなり(図1)、うち9系統は祖先野生種であった。これは栽培種では希なストレス耐性を祖先野生種が保持することを示す。
- 過湿条件では根の通気組織の形成率が増加して根域の酸素不足を回避し、乾燥条件では通導組織(中心柱)の割合が増加して地上部への水供給を効率化する(図2)。これらの形態的変化はストレス耐性に寄与する要因と考えられ、乾燥と過湿が食料生産上のリスクとなる将来気候下で有望な選抜対象になり得る。
- 本研究は、乾燥と過湿の各ストレスに対する応答を多面的に把握することで、乾燥・過湿の相反するストレスへの耐性を効率的に検出できることを示す。
成果の活用面・留意点
- 選抜した10系統は、乾燥と過湿の極端に異なる土壌水分環境に適応する品種開発の材料として利用できる。通気組織の形成や通導組織の割合変化などの根の柔軟な形態応答は主要な適応メカニズムとして育種目標に活用できる。
- 複数指標によるストレス耐性評価は他の作物にも適用できる可能性がある。ただし、相対値による耐性評価の区分は用いる集団により変動し得る。
- 祖先野生種を品種改良に利用する際には、導入形質によって栽培種がもつ収量などの主要農業形質が損なわれないように留意する必要がある。
具体的データ
- 分類
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研究
- 研究プロジェクト
- プログラム名
- 予算区分
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交付金 » 第5期 » 食料プログラム » アフリカ畑作システム
交付金 » アフリカ食料
科研費 » 若手研究(B)
- 科研費
- 研究期間
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2017~2025年度
- 研究担当者
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井関 洸太朗 ( 生物資源・利用領域 )
Olaleye Olajumoke ( 国際熱帯農業研究所 )
- ほか
- 発表論文等
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Iseki and Olaleye(2025) Frontiers in Plant Science 16: 1573313https://doi.org/10.3389/fpls.2025.1573313
- 日本語PDF
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2025_B10_ja.pdf1.87 MB
※ 研究担当者の所属は、研究実施当時のものです。