紅藻カギケノリの世代交代を利用した配偶体種苗の生産技術

関連プロジェクト
熱帯水産養殖
国名
日本
要約
紅藻カギケノリは、反すう家畜由来のメタンガス削減に資する海藻として注目されているが、その養殖生産の実用化に向けては安定的な種苗供給技術の確立が課題となっている。本研究では、カギケノリの世代交代に着目し、水温(25℃)および明暗周期(明期8 h: 暗期16 h)による胞子体の成熟および胞子放出の誘導効果、発芽により得られた配偶体の通気培養による成長促進効果を明らかにする。配偶体は低コストな海面養殖に適した世代であることから、本研究成果はカギケノリ養殖の生産性向上に寄与する。

背景・ねらい

 反すう動物の呼気などから排出されるメタンは、農業由来の温室効果ガス排出の主要因の一つであり、その削減は国際的に重要な課題である。紅藻カギケノリは、メタン生成を阻害するブロモホルムを多量に含有するため、ウシなどの家畜へ給与することによりメタンガスを削減する海藻として注目されている。
 カギケノリは2n世代の胞子体とn世代の配偶体からなる生活環を有し、両世代で形態や増殖特性が大きく異なる(図1)。胞子体は微小形態のため海面養殖には不向きだが、実験室での培養や陸上養殖に適している。しかし、陸上養殖は施設の維持管理に多大なコストを要し、生産量も制約を受ける。一方、配偶体は直立茎が十数cmに伸長するため、陸上養殖に比べ安価で大規模展開可能な海面養殖に適した世代と位置付けられるが、その種苗を人工的に安定生産するための基盤技術は十分に確立されていない。本研究では、カギケノリの世代交代に着目し、配偶体の種となる四分胞子を効率的かつ再現性高く放出させる条件ならびに、発芽後の幼配偶体を効率的に育成する培養条件を明らかにする。本研究により、陸上養殖に依存しない低コストな海面養殖を可能とする種苗供給技術の確立を目指す。

成果の内容・特徴

  1. 本種の胞子体は水温20°C、昼夜等長の明暗周期(明期12 h: 暗期12 h)で安定的に維持されるが、これを水温25℃または短日の明暗周期(明期8 h: 暗期16 h)下で維持することで、成熟および四分胞子の放出を誘導できる。一方、これら以外の条件では、胞子体の成熟および胞子の放出は認められない(表1)。最初の胞子放出までに要する日数の平均は、水温25℃条件では12.3 ± 1.07日、短日条件(明期8 h: 暗期16 h)では15.7 ± 1.31日である(図2左)。また、これら2条件は独立して胞子放出誘導に機能するが、同時に付与することで相乗効果となり、水温を25℃とした場合、最初の胞子放出までに要する日数の平均は昼夜等長条件(明期12 h: 暗期12 h)では12.9 ± 0.79日に対し短日条件(明期8 h: 暗期16 h)では11.0 ± 0.74日となり約2日短縮される(図2右)。
  2. 胞子より発芽した配偶体を、通気条件で培養することにより、成長が有意に促進される(図3上)。4週間の日間成長率は、静置条件では4.72 ± 0.51%、通気条件では6.86 ± 0.36%である。通気条件下では、配偶体に特徴的な直立茎および側枝の発達が顕著であり、根部の分枝も増加する(図3写真)。また、乾重量当たりのブロモホルム含量は静置条件で15.3 ± 6.03 mg g-1、通気条件で33.5 ± 7.26 mg g-1であり、通気によりブロモホルム含量も向上する(図3下)。

成果の活用面・留意点

  1. 本成果をもとにすることで、海面養殖用の種苗となるカギケノリ配偶体を安定的かつ大量に生産することが可能となり、カギケノリ養殖の生産性向上への寄与が期待される。
  2. 本成果は、温帯域由来(国産)のカギケノリ株を対象として最適条件を検討したものであるため、熱帯域等由来の異なる株については、改めて水温条件や日長条件の最適化研究が必要である。
  3. カギケノリを家畜に与えた場合の効果および安全性については、海外ではその検証例があるものの、日本国内においては検証事例が存在しない。そのため、国内での実用化に向けては、給餌試験を通じた安全性の評価およびメタン削減効果検証の実施が必要である。

具体的データ

分類

技術

研究プロジェクト
プログラム名

食料

予算区分

交付金 » 第5期 » 食料プログラム » 熱帯水産養殖

交付金 » 第5期 » 理事長インセンティブ

科研費 » 基盤研究C

科研費
研究期間

2024~2025年度

研究担当者

松田 竜也 ( 水産領域 )

科研費研究者番号: 00849086

桑野 和可 ( 長崎大学 )

科研費研究者番号: 60301363

ほか
発表論文等

Matsuda and Kuwano (2025) Marine Biotechnology 27: 115
https://doi.org/10.1007/s10126-025-10493-2

日本語PDF

2025_B07_ja.pdf2.42 MB

※ 研究担当者の所属は、研究実施当時のものです。

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