黄麹・白麹を用いた麹甘酒化による玄米フィチン酸の脱リン酸化・イノシトール生成促進

関連プロジェクト
新需要創造
国名
日本
要約
玄米は微量栄養素に富む一方、糠層に多いフィチン酸(イノシトール6リン酸)がミネラルと結合し利用性を低下させ得る。本成果は、玄米を麹甘酒化することでフィチン酸を段階的に脱リン酸化し、イノシトール生成を促進できる加工条件を示す。黄麹菌由来米麹単独に比べ、白麹菌由来米麹を配合するとフィチン酸分解とイノシトール生成が有意に高まり、併せて白麹菌由来クエン酸による酸性化により、風味設計や保存性向上への応用も期待される。本成果は、玄米の栄養価改善を目的とした発酵加工設計に資する基礎知見を提供する。

背景・ねらい

 玄米はビタミンB群やミネラル、食物繊維を豊富に含む食品として注目される一方、糠層に多く含まれるフィチン酸(イノシトール6リン酸)はミネラルと結合し、加工方法や摂取条件によっては利用性を低下させる場合がある。そのため、玄米を主原料とする食品では、栄養価を維持・向上させる加工技術の開発が重要となる。
 麹甘酒は米麹由来酵素によりデンプンを糖化する発酵食品であり、ブドウ糖、オリゴ糖、アミノ酸や、ビタミンB群などを含む。一般に黄麹菌(Aspergillus oryzae)が用いられるが、クエン酸を産生する白麹菌(Aspergillus luchuensis)も利用されており、両菌が産生するフィターゼや酸性ホスファターゼは、玄米中フィチン酸の脱リン酸化に寄与すると考えられる。フィチン酸の完全な脱リン酸化により生成するイノシトール(図1)は、乳児の発育に重要な成分として粉ミルクへの配合も推奨されるなど、栄養学的にも注目される成分である。
 本研究では、玄米麹甘酒製造において黄麹菌および白麹菌由来の米麹を単独または混合で用い、白麹菌由来クエン酸による酸性化の程度を把握するとともに、フィチン酸の脱リン酸化およびイノシトール生成量を定量的に評価する。これにより、玄米の栄養価向上を目的とした麹甘酒加工条件設計に資する基礎的知見を提供することを目的とする。

成果の内容・特徴

  1. ヒメノモチ玄米5g、水10 mL、乾燥米麹3gを用い、55°Cで8時間保温して麹甘酒を調製する場合、黄麹菌由来米麹のみを用いた製品(条件1)のBrix糖度およびpHは、それぞれ37.2%および5.98となり、クエン酸含量は検出されない(表1)。
  2. 上記の調製条件において、米麹の使用総量を一定(3g)とし、白麹菌由来米麹の配合比が高まるほど(条件2~5)、麹甘酒のBrix糖度は低下する(表1)。一方、クエン酸含量は段階的に増加し、白麹菌のみを用いた場合に最も高い値 (0.56%)を示す(表1)。これに伴い、麹甘酒のpHは低下する(表1)。
  3. 黄麹菌由来米麹を熱失活させて用いた発酵前試料100g当たりのフィチン酸およびイノシトール含量は、それぞれ652 mgおよび2.15 mgであるのに対し、条件1の麹甘酒では516 mgおよび9.26 mgとなる(図2)。
  4. 白麹菌由来米麹の配合比を25%から75%とした条件2~4の麹甘酒では、条件1の試料と比較して、フィチン酸分解とイノシトール生成が有意に促進される(図2)。
  5. 白麹菌由来米麹のみを用いた麹甘酒(条件5)100g当たりのフィチン酸含量(158mg)およびイノシトール含量(47.9mg)は、条件4とほぼ同等となる(図2)。

成果の活用面・留意点

  1. 玄米を原料とする麹甘酒の製造において、白麹菌由来の米麹を配合してフィチン酸分解を促進することで、栄養価の改善を目的とした製法設計が可能となる。
  2. 白麹菌の米麹に含まれるクエン酸は麹甘酒を酸性化し、雑菌抑制による保存性向上への寄与が期待される。一方で、酸味により風味設計の幅が広がるため、消費者の嗜好性を踏まえた配合調整が推奨される。
  3. 本研究では、市販の乾燥米麹を使用している。麹菌のフィターゼや酸性ホスファターゼ等の酵素活性は菌株ごとに異なるため、本成果を適用する際には、実際に使用する菌株の酵素特性を考慮する必要がある。

具体的データ

分類

技術

研究プロジェクト
プログラム名

食料

予算区分

交付金 » 第5期 » 食料プログラム » 新需要創造

浦上食品・食文化振興財団研究助成

研究期間

2021~2025年度

研究担当者

丸井 淳一朗 ( 生物資源・利用領域 )

見える化ID: 001765

白石 洋平 ( 株式会社ビオック )

竹浦 ( 株式会社ビオック )

Shompoosang Sirinan ( カセサート大学食品研究所 )

Varichanan Patthinan ( カセサート大学食品研究所 )

Boulom Sayviene ( ラオス国立大学 )

ほか
発表論文等

Marui et al. (2025) Food Science and Technology Research 31 (2): 147−153
https://doi.org/10.3136/fstr.FSTR-D-24-00170

日本語PDF

2025_B03_ja.pdf531.99 KB

※ 研究担当者の所属は、研究実施当時のものです。

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