南・東南アジア土着野菜の抗酸化活性の評価

要約

南・東南アジア土着野菜は、食品の機能性のひとつである抗酸化活性ビタミンC含量および全フェノール含量が、種類や系統によって大きく異なる。これらの知見は、土着野菜の優良系統選抜のひとつの指標として利用できる。

背景・ねらい

ある特定の地域に適応し、利用されている土着野菜(indigenous vegetable)は種類が極めて多く、それらの形態的・生態的特性に基づく栽培法や増殖技術、また栄養成分および利用法については、十分に解明されていない。そこで、南・東南アジアの土着野菜の有する潜在能力を明らかにするとともに、優良系統選抜指標としての利用の可能性を探るために、それら土着野菜の抗酸化活性を評価し、抗酸化成分含量との関係を明らかにする。

成果の内容・特徴

  1. 抗酸化活性は80%エタノール抽出液をロダン鉄変法で、全フェノール含量は同抽出液をフォーリン・デニス法で、共に分光光度計を用いて測定する。ビタミンC含量は、メタリン酸抽出液をRQflex plus (Merck、簡易迅速定量分析キット) によって測定するので、HPLC等高額機器を使わず、簡便に評価できる。
  2. チャンチン(Toona sinensis)、ワサビノキ(Moringa spp.)の新葉、ノゲイトウ(Celosia argentea)、シソ(Perilla frutescens)、キマメ(Cajanus cajan)の新葉、イヌホウズキ(Solanum nigram)の新葉、カラスザンショウ(Zanthoxylum ailanthoides)、トウガラシ(Capsicum annuum)の新葉、モロヘイヤ(Corchorus spp.)の中に極めて強い抗酸化活性を示す品種・系統がある。また、抗酸化活性の高い土着野菜は、ビタミンC含量および全フェノール含量、あるいはそれらのいずれかが高い傾向がある(表1)。
  3. 抗酸化活性、ビタミンCおよび全フェノール含量は、同じ野菜であっても品種・系統間で大きな変異が認められるものがある(表2)。
  4. 土着野菜の優良系統選抜のために、形態的・生態的特性、収量特性の他に、抗酸化活性等も選抜指標として利用可能である。

成果の活用面・留意点

ビタミンCおよび全フェノール含量は、栽培時期および栽培条件等によって変動しやすいが、抗酸化活性は比較的安定している。選抜の際にはこれら変動にも留意すべきである。

具体的データ

  1.  

    表1
  2.  

    表2
Affiliation

国際農研 生物資源部

分類

研究

予算区分
国際プロ〔在来野菜育種〕
研究課題

東南アジア在来野菜の特性評価

特に栄養、機能性成分および園芸学的特性等を重視した育種素材の選抜

研究期間

2002年度(2000~2002年度)

研究担当者

佐藤 隆徳 ( 生物資源部 )

ENGLE Liwayway M. ( アジア蔬菜研究開発センター )

ほか
発表論文等

Sato, T. (2002): Evaluation and characterization of indigenous leafy vegetables. RETA5839 Workshop (Collection, Conservation and Utilization of Indigenous Vegetables), Sept.2002, AVRDC, Tainan, ROC, 8-11.

Sato, T. (2002): Evaluation and characterization of indigenous vegetables. RETA5839 Final Workshop (Collection, Conservation and Utilization of Indigenous Vegetables), Dec.2002, Kasetsart University, Bangkok, Thailand, 16-19.

Sato, T., Gueco, L.S. and Engle, L.M. (2002): Evaluation of functional properties of Horseradish Tree (Moringa spp.). (Same as above 2)

日本語PDF

2002_05_A3_ja.pdf872.58 KB

English PDF

2002_05_A4_en.pdf58.49 KB

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