アフリカの灌漑地区に向けた水資源利用効率化技術ガイドライン
背景・ねらい
サブサハラアフリカでは、コメの生産量が消費量を下回り、輸入依存が年々拡大している。コメ増産には灌漑地区での生産向上が重要であるが、水利施設の機能劣化や不適切な水管理により計画面積に灌漑できない事例がある。本ガイドラインは、水資源利用の効率化に資する新たな対策を提示し、選択肢を拡大することを目的として作成した。成果の内容・特徴
- アフリカでは特に末端水路では、土水路が多い。土水路は漏水が大きく、ローアモシ地区では営農開始後で43 mm h-1(図1)である。土水路漏水対策として複数の対策を提案する(図2:C,D)。これら対策により、漏水量が減少し、下流への追加的な用水補給が可能となる。
- コンクリート水路は経年劣化とともに水路表面が粗くなり水の流れが悪化する。劣化した水路に、農家などが家屋に利用している樹脂塗料を塗布(図2:Bでは白色塗料)することにより水の流れが改善 (36~46% (図3)) され、実証試験と同一水路断面の場合、流量が56~84%増加(水深0.6mの場合)する。
- 圃場内での漏水を抑制することで灌漑面積の増加が見込まれる。漏水量が多い圃場において、漏水抑制対策を実施した結果、日減水深(圃場水位の日変化)が5 mm減少する(図4)ことができた。漏水抑制方法としてケンブリッジローラーをけん引(図2:E)する方法、表土をはぎ取り、直接耕盤を締め固める方法について記載している。
- 分水工の更新、カットドレーンなどを用いて圃場の排水を改良する方法、灌漑水路の流水を用いた小水力発電によるポンプ灌漑、ソーラー発電を用いた循環(地中)灌漑(図2:F~I)、間断灌漑(AWD)による節水栽培、水管理改善として、適正な水配分を実施することで灌漑用水が有効利用できる(図5)としている。
- 本ガイドライン記載の一部技術(圃場漏水対策、土水路漏水対策、表面被覆工、適正な水配分、分水工更新)をローアモシ地区の2019年状況(実灌漑面積972 ha)に適用すると、灌漑面積が2,273 ha(計画灌漑面積(1,500 ha)に対して152%)に拡大できる可能性がある(図6)。
- 本ガイドラインは、英語、日本語、スワヒリ語で作成されており、国際農研のウェブサイトからダウンロードが可能である (https://doi.org/10.64096/jircas2025.003)。
成果の活用面・留意点
- 本ガイドラインで示した技術の多くは初期投資が必要である。このため、技術を採用するにあたり農業関連融資制度の整備が望ましい。
- 本ガイドラインに示した技術は、農家や土木技術者による実施が可能である。また他の灌漑地区でも適用可能である。しかし、土壌、気象などにより効果の値は変化することから、技術導入前に試験施工を行うことが望ましい。
- 水利施設関連対策や圃場漏水対策は、対策を実施した水路などに隣接した圃場の農家や、漏水対策を実施した農家だけに直接裨益するものではなく、灌漑地区全体の水利用効率が改善されるものである。このため、対策導入にあたっては、灌漑地区(もしくは灌漑ブロック)農家の同意が必要である。
具体的データ
- 分類
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技術
- 研究プロジェクト
- プログラム名
- 予算区分
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交付金 » 第5期 » 食料プログラム » アフリカ稲作システム
補助金 » 農林水産省・農村振興局 » 海外農業農村開発促進調査等事業
アフリカ稲作振興支援(CARD)
- 研究期間
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2017~2024年度
- 研究担当者
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廣内 慎司 ( 農村開発領域 )
ORCID ID0000-0002-0398-3677見える化ID: 001783大西 純也 ( 農村開発領域 )
山田 雅一 ( 農村開発領域 )
見える化ID: 001786進藤 惣治 ( 農村開発領域 )
降籏 英樹 ( 農村開発領域 )
見える化ID: 001734石島 光男 ( 農村開発領域 )
宇野 健一 ( 農村開発領域 )
柳原 誠司 ( 理事 )
廣瀬 千佳子 ( 元農村開発領域 )
見える化ID: 001803内村 求 ( 元農村開発領域 )
横山 繁樹 ( 元社会科学領域 )
- ほか
- 発表論文等
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廣内慎司ら (2022) ⽔⼟の知 90(6)https://doi.org/10.11408/jjsidre.90.6_415横⼭茂樹 (2022) 農業経営研究 59(4)https://doi.org/10.11300/fmsj.59.4_69
For the promotion of rice cultivation in Africa Recommended Technology Guideline
廣内慎司ら (2025) ⽔⼟の知 93(6) - 日本語PDF
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2025_B17_ja.pdf1.28 MB
※ 研究担当者の所属は、研究実施当時のものです。