農家の目で土壌を診る:土壌肥沃度認識の妥当性と圃場管理への活用

関連プロジェクト
アフリカ畑作システム
国名
ガーナ
要約
ガーナ北部の小規模農家は、土色や土性、雑草種などの経験的指標に基づき土壌肥沃度を評価している。農家の肥沃度認識はpH、全窒素などの土壌理化学性と高い整合性をもつ。この肥沃度認識は、作物選択や有機資材施用の意思決定に反映される傾向にある。本成果は、ガーナ北部の土に関する農家知識の妥当性を定量的に評価したものであり、農家知識を活用した現地適応型の圃場管理・普及指針の構築に資する。

背景・ねらい

 サブサハラアフリカでは土壌肥沃度の空間的変動が大きく、化学肥料購入余力の低い小規模農家(以下、「農家」という。)にとって、限られた資源を効率的に活用するための作物選択や有機資材施用は重要である。従来の土壌診断は手法が複雑で高コストなため普及が進んでいない。一方、農家は経験に基づき土壌の色や土性、雑草種などを指標として肥沃度を評価し、作物選択などの圃場管理に反映させている。このため、農家による土壌肥沃度認識を理解することは、その土地に合った持続的土壌肥沃度管理の推進につながる。
 本研究では、サブサハラアフリカの中でもサバンナ地帯に位置するガーナ北部の畑作を対象に、4地域60農村において、計300圃場の土壌試料採取と対応する農家への聞き取り調査を実施し、農家の土壌肥沃度認識と土壌理化学性との整合性を評価する。また、農家の土壌肥沃度認識が作物選択や有機資材施用に与える影響を明らかにする。

成果の内容・特徴

  1. 農家は主要な土壌肥沃度指標として、土色、土性、雑草の種類を利用している(図1)。300圃場の土壌は、肥沃、 普通、 少し低肥沃、 低肥沃に分類され、各分類ごとの圃場数は21、222、48、9圃場である。
  2. 農家の土壌肥沃度認識において、肥沃度が高い土壌ほど、pH、電気伝導度(EC)、全炭素、全窒素、有効態リン酸、交換性陽イオン、交換性陽イオン容量(CEC)の値が高い(表1)。例えば、肥沃度が高いほど全窒素量の平均値は有意に高く、肥沃(1.08 g kg⁻¹)>普通(0.65)>少し低肥沃(0.50)>低肥沃(0.39)の順に低下する。
  3. 作物選択では、主食作物であるトウモロコシは肥沃度にかかわらず広く栽培される傾向がある一方、農家が「低肥沃」と認識する圃場では換金作物であるラッカセイ・ダイズ・ヤムは栽培されないなど、肥沃度認識に応じた作物選択が行われている(図2)。
  4. ガーナ北部において、有機資材利用の割合は全体の7%と低いものの、有機資材を施用する場合は、肥沃もしくは低肥沃と認識する圃場に施用される傾向がある。肥沃度区分別にみると、肥沃圃場の29%、低肥沃圃場の56%に施用されている。一方、普通圃場では4%、少し低肥沃圃場では2%にとどまり、施用割合は低い(表2)。一般に、農家が肥沃度の低い圃場の改善を目的として有機資材を施用することは広く報告されている。しかし、この地域では利用可能な有機資材量が制限されているため、肥沃度の高い圃場に資源を集約し施肥が必要となる作物を栽培するなど、資材制約下で利益の最大化を図る戦略も併せて取られていることが示唆される。

成果の活用面・留意点

  1. 普及関係者が農業技術普及において、農家の土壌肥沃度認識を活用することで、現地条件に適した作物配置や施肥指針の提案が可能となり、肥料効率の向上や収量改善につながる。
  2. 特に、農家の土壌肥沃度評価をもとに換金作物の栽培適地や有機資材施用適地を提案することで、収益性や技術効果の向上が期待される。
  3. 本研究成果の他地域への適用には、環境や資材利用状況の違いを考慮する必要がある。
  4. 有機資材に関する技術普及の際には、現状の低い採用率を踏まえ、新たな施用法の開発や資材確保の仕組みづくりが求められる。

具体的データ

分類

研究

研究プロジェクト
プログラム名

食料

予算区分

交付金 » 第5期 » 食料プログラム » アフリカ畑作システム

研究期間

2021~2025年度

研究担当者

八下田 佳恵 ( 社会科学領域 )

中村 智史 ( 生産環境・畜産領域 )

科研費研究者番号: 00749921

小出 淳司 ( 社会科学領域 )

村中 ( 情報広報室 )

ほか
発表論文等

Yageta et al. (2025) Geoderma Regional 41: e00972
https://doi.org/10.1016/j.geodrs.2025.e00972

日本語PDF

2025_B12_ja.pdf3.73 MB

※ 研究担当者の所属は、研究実施当時のものです。

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