熱帯カキ養殖の生産拡大に向けた小規模養殖向け中間育成装置
関連プロジェクト
熱帯水産養殖
国名
マレーシア
要約
熱帯マングローブ汽水域における稚ガキの養殖効率向上を目的として開発した簡易構造の中間育成装置は、安価な市販資材により構築され、養殖業者自身による組み立てが可能であるため、現場への設置・導入が容易である。マレーシアの養殖場での飼育試験では、対照となる網カゴでの飼育に比べ、摂餌効率は向上し、また、貝殻の伸長が促進される。熱帯の汽水域では付着物が多く発生するため定期清掃が必要になるが、装置の構造を簡素化したことで維持管理も容易となり、小規模養殖業者への普及が期待される。
背景・ねらい
熱帯域のカキ養殖では稚貝の初期死亡率が高く、このことが産業拡大を阻む主要な課題となっている。また、陸上飼育や大型のFLUPSYシステム(中間育成を目的とする筏型のアップウエリング装置)は導入コストが高く、小規模養殖業者には利用が難しいという問題がある。 こうした状況を踏まえ、現場で簡便に運用でき、かつ小規模養殖業者でも導入可能な低コスト・小型の中間育成装置の開発が求められている。本研究では、熱帯のマングローブ汽水域に適したカキ稚貝用中間育成装置を開発し、稚貝の生残率向上と成長促進を実現することで、地域水産業の規模拡大に寄与することを目的とする。本研究で開発する装置は簡易構造を採用し、現場での組立や清掃が容易で低コストに導入できることをねらいとする。また、装置の運用により飼育槽内の水質を安定させ、給餌効率と成長を向上させることで、本垂下への移行までの短期育成を実現する。
成果の内容・特徴
- 開発された中間育成装置は、水中ポンプにより槽内の下層水を上方へ排出することで、「アップウエリング」と呼ばれる上向きの流れを形成し、換水率を高く保つ構造となっている。この仕組みにより稚貝の生残および成長に適した環境が維持される。装置は安価な市販資材を用いた設計で、養殖業者による自作が可能であり、簡素な構造であることから現場での組立や清掃も容易で、普及性と持続性に優れる(図1、2)。
- 水中ポンプによる強制換水と補助エアレーションの組み合わせにより、餌となる植物プランクトンの供給が確保され、溶存酸素濃度が安定する。この環境下では、稚貝の摂餌効率が有意(t
検定、p < 0.05)に向上する(図3)。 - 2週間の飼育試験では、同装置を用いた場合には通常の網カゴを用いた飼育と比較して殻長18 mmを超える個体の割合が有意(カイ二乗検定、p
< 0.01)に多く、同装置は貝殻の成長を促進する効果をもつことが強く示される(図4、図5)。 - 同装置は構造が簡素であるため、現場での設置作業や維持管理が容易であり、養殖作業の労力軽減に寄与する。今後、熱帯汽水域における小規模養殖業者への普及が期待され、熱帯汽水域におけるカキ養殖の生産拡大とカキ養殖産業の持続的発展に寄与する技術として有望である。
成果の活用面・留意点
- 開発した中間育成装置は、小型で簡易構造のため小規模養殖業者が導入しやすく、作製および運用における作業負担を軽減する。
- 導入コストが低いため、初期投資を抑えつつ稚貝の育成工程を安定化でき、稚貝の購入費用の低減と養殖工程の安定化を通じて所得向上に寄与する。
- 本装置は稼働に電源を必要とする。単一台では太陽光発電による自立電源化も将来的に可能と見込まれるが、多台数で運用する場合には、現地の電源インフラや日照条件などに左右される。
- 将来的にはIoTやセンサー技術を組み合わせた自動監視・制御システムの導入により、管理負担をさらに軽減し、スマート養殖への展開が期待される。これにより、持続的な水産資源利用と環境調和型養殖の実現が可能となる。
具体的データ
- 分類
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技術
- 研究プロジェクト
- プログラム名
- 予算区分
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交付金 » 第5期 » 食料プログラム » 熱帯水産養殖
- 研究期間
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2021~2025年度
- 研究担当者
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圦本 達也 ( 水産領域 )
ORCID ID0000-0002-7275-064X科研費研究者番号: 90372002 - ほか
- 発表論文等
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Yurimoto T., et al. (2025) Improvement of the Nursery Upweller for Young Oysters in Tropical Mangrove Estuaries. Aquatic Sciences and Engineering 40(4): 262–271https://doi.org/10.26650/ASE.2025.1738425
- 日本語PDF
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2025_B08_ja.pdf1.14 MB
※ 研究担当者の所属は、研究実施当時のものです。