ハイガイ養殖漁場管理のための簡便な生物指標の開発

要約

東南アジアで生産量が激減しているハイガイの養殖漁場を適切に管理するため、二枚貝の成育状態の指標である丸型指数及び肥満度をハイガイに活用できるよう改善し、ハイガイの成育状態及び漁場環境を簡便に評価するとともに、養殖漁場を管理するための科学的根拠を提案する。

背景・ねらい

アカガイの近縁種であるハイガイTegillarca granosa(図1)はミネラル・ビタミン等を多く含み、東南アジア住民の栄養バランスの観点からも非常に重要な水産資源である。しかしながら近年は沿岸環境の悪化に伴って生産量が激減しており、資源回復への対策及び適正な養殖漁場の管理が求められている。そこで、二枚貝の成育環境の指標となる丸型指数及び肥満度をハイガイに適用できるよう改善するとともに、現地で簡便に測定する手法を確立することにより、ハイガイ養殖漁場及び成育環境の適正評価を行う。また、評価結果に基づき、養殖漁場区域の変更や早期収獲などの適切な漁場管理を提言するための科学的根拠とする。

成果の内容・特徴

  1. 同サイズの個体間での比較しかできなかったアサリ用の丸型指数(殻幅/殻長)に対して、アロメトリー式を利用してサイズ依存項を除去した修正丸型指数(図2A、式1)は、サイズに依存せずに二枚貝の成長の良否を比較できる。
  2. 二枚貝の生理的状態の指標である肥満度(軟体部重量/全重量)の軟体部重量を(全重量-殻重量)に置き換え、殻重量は殻幅とのアロメトリー式から推定することにより、貝殻を開けず簡便に肥満度を推定できる(図2B、式2)。
  3. ハイガイの修正丸型指数は漁場ごとに異なり(図3)、修正丸型指数と簡便な肥満度測定法は、マレー半島西海岸におけるハイガイ養殖漁場の環境評価に活用できる(図4)。同一漁場内において、修正丸型指数が増加するとハイガイの成長不良が進行中と解釈できるため、養殖漁場の場所替えが推奨される。一方、肥満度が減少すると、肉質部が痩せ始めていることが示唆されるため、早期の収獲が推奨される。

成果の活用面・留意点

  1. 修正丸型指数及び肥満度は、ノギスと重量計で殻長・殻幅・全重量の3変数を計測するだけで簡単に計算できるため、養殖業者や水産局職員等が容易に活用でき、養殖漁場のモニタリングを実施できる。
  2. 漁場環境の変化を早期に把握するためには、定期的にモニタリングを実施し、データを集約するシステム構築が重要である。
  3. 修正丸型指数は死殻にも適用できるため、貝殻標本があれば過去の漁場環境についても推測することが可能である。

具体的データ

  1. 図1 ハイガイ(Tegillarca granosa)の産地による形態の違い 

     

  2. 図2 ハイガイの成長の良否に関する改良指標と推定式
    (A)修正丸型指数、(B)推定肥満度

     灰色は予測区間(濃灰:95%、淡灰:68%)

     

  3. 図3 ハイガイの海域別修正丸型指数(A)とハイガイ採集地点(B)

     

  4. 図4 マレーシアにおけるハイガイ漁場モニタリング及び漁場管理の想定図
Affiliation

国際農研 水産領域

分類

技術

研究プロジェクト
プログラム名

高付加価値化

予算区分

交付金 » 熱帯水産資源

研究期間

2020年度(2016~2020年度)

研究担当者

Teoh Hong Wooi ( 厦門大学マレーシア校 )

齊藤 ( 水産研究・教育機構 )

ほか
発表論文等

Saito H and Teoh HW (2021) Malaysian Fisheries Journal

日本語PDF

2020_C10_A4_ja.pdf495.57 KB

2020_C10_A3_ja.pdf495.26 KB

English PDF

2020_C10_A4_en.pdf720.26 KB

2020_C10_A3_en.pdf719.61 KB

ポスターPDF

2020_C10_poster.pdf562.35 KB

※ 研究担当者の所属は、研究実施当時のものです。

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