パパイア奇形葉モザイクウイルス(PLDMV)の全塩基配列
東南アジア各国への蔓延が懸念されているパパイア奇形葉モザイクウイルス(PLDMV)の全塩基配列の解読により、その遺伝子構造を明らかにした。
背景・ねらい
パパイアのウイルス病は果実に病斑を生じ商品価値を著しく損なうため、沖縄以南の熱帯アジア地域をはじめ世界中で大きな問題になっている。その病原の一つとして知られているパパイア奇形葉モザイクウイルス(PLDMV)は、これまでわが国の固有のウイルスとされてきたが、近年台湾各地でも発生が報じられ、東南アジア各国への蔓延が懸念されている(図1、図2)。
そこで本研究では、これまで明らかにされていなかったPLDMVの全塩基配列を解明し、その遺伝子構造を明らかにすることにより、分子生物学的手法による同病制御法の開発をめざした。
成果の内容・特徴
- PLDMV遺伝子の既知配列をもとに、5'RACEなどの手法を用いてcDNA断片群を得、そのシークエンスから、全塩基配列を決定した。
- PLDMVは、10,153塩基のRNAからなっている。5'末端にはポリA配列とそれに続く134塩基からなる非翻訳領域が見いだされ、135塩基目から9,942塩基目にかけて長大な読み取り枠(ORF)が存在する。3'末端には208塩基からなる非翻訳領域とポリA配列が存在する。ORFは、3,269アミノ酸により構成され、10種類のタンパク質がコードされている(図3、表1)。アミノ酸配列にもとづいた各タンパク質のホモロジー検索では、高い相同性を示すウイルスは見いだされず、PLDMVが他種ウイルスとの組換えによってできたウイルスなどではなく、独立したウイルス種であることを示している。
- PLDMVと同時に発生しているパパイア輪点ウイルスパパイア系統(PRSV-P)の各タンパク質のアミノ酸配列をPLDMVのそれと比較すると、これまで両者の識別に用いてきたCPは他のタンパクに較べ相同性が高く(図4右端)、P1(図4左端)が最も相同性が低いことが明らかになった。
成果の活用面・留意点
- PLDMV遺伝子のP1タンパク部分を識別することでRT-PCRなどにより精度の高い遺伝子診断ができる。
- 本遺伝子を用いた、PRSV-P・PLDMV抵抗性組換えパパイアの作出を、アメリカ農務省・コーネル大学・JIRCASとの共同研究として実施中である。
具体的データ
- Affiliation
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国際農研 沖縄支所
- 分類
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研究
- 予算区分
- 経常
- 研究課題
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植物ウイルス遺伝子を用いたパパイアウイルス病抵抗性植物の作出
- 研究期間
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平成12年度(11~13年度)
- 研究担当者
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眞岡 哲夫 ( 沖縄支所 )
野田 千代一 ( 沖縄支所 )
- ほか
- 発表論文等
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投稿準備中
- 日本語PDF
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