日本在来小麦と中国育成小麦の赤かび病抵抗性遺伝子の比較と集積
小麦赤かび病抵抗性品種の延岡坊主小麦(日本在来)と蘇麦3号(中国育成)との雑種F1に由来する半数体倍加系統を用い、関与する抵抗性遺伝子の数が推定され、両品種のもつ抵抗性遺伝子を集積した系統が作出できる。
背景・ねらい
小麦の赤かび病は、生産低下とかび毒汚染をおこす世界的な小麦の最重要病害であり、とくに開発途上地域における小麦の持続的安定生産には抵抗性品種の育成が重要な要素になる。しかし有効な抵抗性育種素材が限られており、抵抗性の遺伝様式も十分に明らかでない。そこで、日本と中国の品種で抵抗性の遺伝様式を明らかにし、それらの抵抗性を集積した有望系統を作出する。
成果の内容・特徴
- 延岡坊主小麦(日本在来)と蘇麦3号(中国育成)の雑種F1から育成した半数体倍加系統(120系統)の抵抗性は、強とやや強で7:1に分離するので、両品種では少なくとも3個の抵抗性主働遺伝子が異なる。また、罹病性系統が分離しないので、延岡坊主小麦と蘇麦3号は共通の抵抗性遺伝子をもつ(表1、図1)。
- 6B染色体長腕上の芒の抑制遺伝子B2によって短頂芒になる半数体倍加系統においては赤かび病抵抗性は3遺伝子モデルの7:1に分離するが、B2を有しない長芒系統では2遺伝子モデルの3:1の分離比に適合する。また、両系統群で抵抗性の平均値に有意な差が認められることから、両親何れかの抵抗性遺伝子の1つが6B染色体長腕上のB2遺伝子に連鎖する(表1)。
- 延岡坊主小麦と蘇麦3号の抵抗性を集積し、両親並で小麦中間母本農4号よりも高度な抵抗性を示す66系統を選抜した。
成果の活用面・留意点
- 複数の赤かび病抵抗性遺伝子に関する情報は、新しい抵抗性遺伝資源の探索と抵抗性遺伝子の集積に活用できる。
- 異なる遺伝資源の抵抗性遺伝子を集積した有望系統は、素材として小麦赤かび病抵抗性の品種改良に活用できる。
- 有望系統が、高いレベルの抵抗性をどの程度の頻度で後代へ伝えるか確認する必要がある。
具体的データ
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表1(延岡坊主小麦x蘇麦3号)F1由来の半数体倍加系統における赤かび病に対する反応と芒の形質の関係
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- Affiliation
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国際農研 生物資源部
- 分類
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研究
- 予算区分
- 麦緊急開発
- 研究課題
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分子マーカー利用による小麦赤かび病抵抗性の選抜法の確立と抵抗性遺伝子の集積
- 研究期間
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平成12年度(11~13年度)
- 研究担当者
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坂 智広 ( 生物資源部 )
末永 一博 ( 生物資源部 )
稲垣 正典 ( 生物資源部 )
- ほか
- 発表論文等
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Ban, T. and K. Suenaga (2000) Genetic analysis of resistance to Fusarium head blight caused by Fusarium graminearumin Chinese wheat cultivar Sumai 3 and the Japanease cultivar Saikai 165. Euphytica 113: 87-99.
Ban, T. and M. Inagaki (2001). Genetic difference of resistance to Fusarium head blight in two wheat cultivars, Nobeokabouzu-komugi and Sumai 3. In; Z. Bedö and L. Láng(eds.), Developments in Plant Breeding, ‘Wheat in a Global Environment’, pp. 359-365, Kluwer Academic Publishers, Dordreeht, The Netherlands.
- 日本語PDF
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