ダイズ「蘇豆27(Sudou27)」
「蘇豆27(Sudou27)」は、耐塩性が高く、多収性、高品質、病害抵抗性を備えた優良品種である。塩害地域におけるダイズ生産の安定化が期待される。
国際農研が中国江蘇農業科学院・工芸作物研究所と共同研究を行い、耐塩性遺伝子Nclを導入して育成したダイズの新品種であり、令和4年8月29日、中国で品種登録済である。
国際農研が中国江蘇農業科学院・工芸作物研究所と共同研究を行い、耐塩性遺伝子Nclを導入して育成したダイズの新品種であり、令和4年8月29日、中国で品種登録済である。
背景・ねらい
世界の陸地に分布する塩類土壌面積は、約8.3億haと推計されており(FAO)、その約53%がアジア大陸に分布している。中でも、特に海岸沿岸部では、河口への海水遡上や地下水への塩水侵入により農地で塩害が発生し、作物の生産性は低くなる。そのため、耐塩性かつ多収性・高品質を備えた作物品種の開発が強く求められている。
国際農研では、これまでにブラジルのダイズ品種から耐塩性遺伝子Nclを見出し、Ncl保有系統が塩害圃場でも高い子実収量を維持できることを示してきた(平成27年度国際農林水産業研究成果情報B4「ダイズ耐塩性遺伝子Nclの単離とその利用による耐塩性の向上」)。世界の不良環境地域におけるダイズ生産の安定化を目指した研究の一環として、中国やベトナム、インドを対象に、耐塩性遺伝子を応用する優良ダイズ品種の開発を進めている。
「蘇豆27(Sudou27)」は、このような背景のもとで、国際農研が、中国江蘇農業科学院・工芸作物研究所との共同研究を行い、耐塩性遺伝子Nclを導入したダイズの新品種である。新品種育成の成功により、基礎研究の成果である耐塩性遺伝子Nclを応用したダイズの育成に活路が開かれ、農地の塩害問題を抱える地域でのダイズ生産の安定化が期待される。
特徴
- 中国のダイズ中間母本系統「1138-2」を母、耐塩性遺伝子Nclを持つ系統「NILs72-T」を父とする人工交配で得られた雑種後代をもとに、世代促進と優良系統選抜によって開発された新品種である。
- 中国江蘇省北部地域での夏播きに適したダイズ品種である。
- 中国江蘇省新品種審査委員会により優良性が認められ、令和4年8月29日、中国で品種登録済である。
- 中国江蘇省北部地域の主要なダイズ栽培品種で新品種審査試験の対照品種である「徐豆13(Xudou13)」と比較して、子実収量は6.9%高く(平均収量3.14 t/ha)、種子脂質含量は1.4%高い(平均脂質含量22.4%)多収で高品質な品種である。
- 種子脂質含量が高いため(脂質含量は22.4%)、食料油用のダイズ品種として適する。
- 最も塩害耐性が低い幼苗期の栽培土壌に120 mM NaCl溶液を浸した3週間の耐塩性評価試験では、「徐豆13」よりも高い耐塩性を示す。
- 対照品種「徐豆13(Xudou13)」と比べ、生育期は3.5日程長いので、次の作物の播種を遅らせる可能性がある。
- ダイズモザイクウイルス(Soybean Mosaic Virus、SMV)感染によるダイズモザイク病の抵抗性を有すると認められる。
登録情報
■出願先国:中華人民共和国
- 農林水産植物の種類
- Glycine max (L.) Merr. (ダイズ種)
- 品種名称
- 蘇豆27
- 旧系統名
- 蘇夏HT038
- 出願番号
(出願日) - ー
- 公表日
- ー
- 審査認定番号
(登録日) - 蘇審豆20220012
(2022/8/29) - 育成者権の
存続期間の終期 - ー
- 育成者権の共有者
- 中国江蘇農業科学院・工芸作物研究所
関連文献
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