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671. 世界土壌デー2022

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671. 世界土壌デー2022 

世界土壌デー(World Soil Day)」は、土壌資源に対する理解を深め、土壌の健全性の重要性を認識し、その持続的管理を提唱する場として、毎年12月5日に開催されています。今年は、「土壌-食料のはじまりSoils: Where food begins」をテーマに開催されます。

人間と同じく、植物も動物も生きていくうえで、エネルギーや基礎栄養素を補充し、免疫力を高めるために、ビタミン、ミネラル等が不可欠ですが、そのためには肥沃な土壌が必要です。世界土壌デーの公式サイトによると、食料の95%が土壌を生産の場としています。また、自然界に存在する18の栄養素(元素)が植物の生育に不可欠であることが知られていますが、そのうち、光合成の働きによって大気中から固定される炭素と水として供給される水素および酸素を除く15の元素が土壌から供給されています。2050年に約100憶人に達するとされる世界人口の食料需要を満たすためには持続的な土壌管理が不可欠です。

 

特に、アフリカの多くの国々では、人口増加に伴う食料需要の著しい上昇に対して、農業生産性の向上が追い付いておらず、慢性的に食料輸入に依存しています。アフリカでは特に土壌劣化が深刻であり、土壌条件が食料生産の大きな制限要因となっており、食料生産性の改善には、土壌肥沃度の十分な理解とその土壌情報に基づいた肥培管理技術の確立が必要です。

 

国際農研は、こうした問題を抱えるアフリカにおいて、相手国の研究機関や行政機関とともに、土壌肥沃度の改善に資する研究に長年取り組んできました。現在は、アフリカ稲作システムプロジェクト及びアフリカ畑作システムプロジェクトにおいて、アフリカにおける土壌肥沃度管理や貧栄養土壌での生産性向上を目標とした技術開発を行っています。

また、土壌の持続的管理に関する課題について科学と政策の両面から評価する必要性が高まっており、国際社会も様々なイベントを通じて啓蒙活動を行っています。国際農研も、今年8月に開催された第8回アフリカ開発会議(TICAD8)を機に、土壌研究を含むアフリカ農業研究に関する特設ページを開設し、公式イベントとして2つの土壌に関連するイベントを開催しました。

 

国際農研アフリカ農業研究特設ページ
https://www.jircas.go.jp/ja/africa-research

「健全な土壌とアフリカの食料安全保障:―環境再生型農業の可能性―」
開催報告 https://www.jircas.go.jp/ja/program/proc/blog/20220825

「アフリカ農学と土壌肥沃度・貧栄養土壌管理の課題」
開催報告 https://www.jircas.go.jp/ja/program/proc/blog/20220915

 

世界の肥料価格が史上最高値に迫る勢いで高騰している昨今、輸入肥料に依存する低所得国では、土壌の健康を維持する上での技術的・経済的な困難に直面しています。そのため、短期的な財政・人道支援だけでなく、中長期的に、世界各地域の気候土壌学的・社会経済的条件に見合った肥培管理方法、肥料利用の効率化を可能とする作物の品種開発等を通じ、生産性維持・向上と環境負荷低減を両立するイノベーションが期待されます。

 

(文責:食料プログラム 中島一雄、生産環境・畜産領域 辻本泰弘、中村智史、情報広報室 金森紀仁、情報プログラム 飯山みゆき)

 

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