国立研究開発法人 国際農林水産業研究センター | JIRCAS

AtGolS2遺伝子を導入したイネは干ばつ条件下での収量性が原品種より高い

要約

シロイヌナズナのガラクチノール合成酵素遺伝子AtGolS2を導入した遺伝子組換えイネは、原品種である陸稲品種CuringaおよびNERICA4に比較してガラクチノールを多量に蓄積する。この遺伝子組換えイネ系統の中には干ばつ条件の圃場で原品種より高い収量を示すものがある。

背景・ねらい

作物の収量は干ばつにより顕著に低下する。これまで、遺伝子組換えによる干ばつに強いイネの開発を目的とした数多くの報告例がある。しかし、それらの多くは形質転換効率が高いモデル品種を材料として用いており、かつ形質評価は温室レベルにとどまっている。遺伝子組換え技術を干ばつに強いイネ品種の育成に利用するためには、干ばつが収量減の要因となる地域の主要品種を用いること、および干ばつ条件の圃場において収量性が高い系統を選抜育成することが必要である。本研究では、干ばつ条件の圃場で高い収量性を示すイネ系統の開発を目指し、南米およびアフリカの主要品種に乾燥耐性候補遺伝子であるシロイヌナズナに由来するガラクチノール合成酵素の遺伝子AtGolS2を導入した遺伝子組換え系統を育成し、これらの干ばつ条件の圃場における収量性を明らかにする。

成果の内容・特徴

  1. シロイヌナズナのガラクチノール合成酵素遺伝子AtGolS2を導入したCuringaおよびNERICA4(それぞれ南米およびアフリカの主要陸稲品種)は、遺伝子組換えをしていない原品種と比べ、ガラクチノールを植物体内に多量に蓄積する(図1)。
  2. AtGolS2遺伝子を導入したイネでは、干ばつ条件下における葉の相対含水率や光合成能等、干ばつ抵抗性に関与する生理機能が原品種と比べ向上し、干ばつによる生育阻害が低減される。
  3. 栽培期間中の無降雨期間は、2012-13年期においては31日間、2013-14年期においては39日間、2014-15年期においては19日間であり、圃場の干ばつの程度は年次間で異なる。いずれの干ばつ条件においても原品種より高い収量を示す優良系統がある(図2)。
  4. 優良系統においては原品種と比べ穂数、稔性および生長量が増加しており、これらの形質が収量増加に寄与する。

成果の活用面・留意点

  1. 本研究における圃場試験はコロンビア国 国際熱帯農業センターの隔離圃場で実施されたが、育成・選抜された系統を実用化するために、試験を実施できるアフリカや南米の異なる地域での現地栽培試験を実施する必要がある。
  2. 実用化に際しては、各国の遺伝子組換え体の取扱に関する法令に留意するとともに、国際研究機関、現地研究機関、民間企業等と協力し事業を展開する必要がある。
  3. AtGolS2遺伝子を導入したCuringaおよびNERICA4はいずれも干ばつ条件の圃場で高い収量性を示したことから、その他の陸稲品種においても同様の効果が期待できる。

具体的データ

  1. 図1 シロイヌナズナのAtGolS2遺伝子導入によるイネ植物体内へのガラクチノール蓄積量の向上
    図1 シロイヌナズナのAtGolS2遺伝子導入によるイネ植物体内へのガラクチノール蓄積量の向上

    横軸は遺伝子組換え体の系統番号。
  2. 図2 CuringaおよびNERICA4にAtGolS2遺伝子を導入した遺伝子組換え系統の干ばつ条件の圃場における収量の向上
    図2 CuringaおよびNERICA4にAtGolS2遺伝子を導入した遺伝子組換え系統の干ばつ条件の圃場における収量の向上

    (a)コロンビア国 国際熱帯農業センターにおける干ばつ条件での隔離圃場試験の様子。左が原品種のCuringa、右がCuringaにAtGolS2遺伝子を導入した系統2580。(b)横軸は遺伝子組換え体の系統番号。複数年にわたり収量が原品種より有意に多かった系統2580および1577について、原品種に対する収量増分を%で示した。
所属

国際農研熱帯・島嶼研究拠点

国際農研生物資源・利用領域

分類

研究

研究プロジェクト

不良環境に適応可能な作物開発技術の開発(不良環境耐性作物開発)

プログラム名

農産物安定生産

予算区分

交付金不良環境耐性作物開発

受託農林水産省・農林水産分野における気候変動対応のための研究開発

研究期間

2017年度(2013~2017年度)

研究担当者
  • 石崎 琢磨 (熱帯・島嶼研究拠点)
  • 小賀田 拓也 (生物資源・利用領域)
  • 圓山 恭之進 (生物資源・利用領域)
  • 中島 一雄 (生物資源・利用領域)
  • 石谷 (国際熱帯農業センター)
  • Selvaraj Michael (国際熱帯農業センター)
  • 草野 (筑波大学)
  • 高橋 史憲 (理化学研究所)
  • 篠崎 一雄 (理化学研究所)
  • 発表論文等

    Selvaraj M et al. (2017) Plant Biotechnology Journal, 15 (11): 1465-1477 DOI: 10.1111/pbi.12731

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