国立研究開発法人 国際農林水産業研究センター | JIRCAS

微生物によるセルロースの低コスト直接糖化法の開発

要約

微生物培養によりセルロースを直接糖化する方法を開発した。セルロース高分解菌クロストリジウム・サーモセラム培養時にリサイクル可能なβ-グルコシダーゼを共存させると培地中にグルコースを高濃度で蓄積できる。セルロース糖化工程でセルラーゼを使用する必要が無い微生物糖化法である。

背景・ねらい

セルロース系バイオマスからのバイオ燃料やバイオ化成品生産において、効率よく安価に糖化し、グルコース等の発酵糖を得るための技術開発は重要である。現在、カビを用い酵素(セルラーゼ)生産を行い、そのセルラーゼを大量に使用し糖化を行っている。しかし、セルラーゼ調製費用や糖化効率向上を狙ったセルラーゼの大量使用のため糖化プロセスが高コスト化し、実用化の大きな障害となっている。本研究ではセルラーゼを使用せず、微生物培養だけでセルロースを糖化させ、生成するセロビオースをリサイクル可能なβ-グルコシダーゼによりグルコースへ変換させ、培養液に蓄積させる。微生物培養及びβ-グルコシダーゼのリサイクルによる糖化のため酵素使用やコストを大幅に減らことができる。

成果の内容・特徴

  1. 本方法は、好熱性セルラーゼ高分解菌クロストリジウム・サーモセラムの培養時に好熱菌由来のリサイクル可能なβ-グルコシダーゼを共存させることで、直接セルロースを糖化しグルコースを培養液に遊離、蓄積させる糖化法である(図1)。本方法を生物学的同時酵素生産・糖化(Biological Simultaneous Enzyme-production and Saccharification: BSES)法1)と命名した。
  2. 10%(w/v)セルロースを含んだ培地に本菌の培養と同時に1gセルロースあたり10ユニット(1ユニットは1分間に1µmolのグルコースを生成する酵素活性力)の耐熱性β-グルコシダーゼを共存させると、6~8日間で約7%(w/v)のグルコースを培養液中に蓄積する(図2)。
  3. 本菌は、セルロース分解生成物であるセロビオース(グルコースがβ-1,4結合した2糖)のようなセロオリゴ糖は速やかに代謝するが、共存するβ-グルコシダーゼにより強制的にグルコースへ変換された後は代謝されずに培養液に蓄積されていく。
  4. 実際のバイオマスサンプルとして、アルカリ前処理稲わら(セルロース10%含有)を用いてBSES法を行った結果、4~5日間で7.2% (w/v)のグルコースを培養液中に蓄積できる(図3)。
  5. 従来使用していたセルラーゼを使用せず、本菌の培養とリサイクル可能なβ-グルコシダーゼにより、セルロースからのバイオ燃料コスト全体の4割強を占める糖化コストを全体の約1割の培養コストのみに圧縮できる点で、これまでに無い画期的糖化技術である。

成果の活用面・留意点

  1. クロストリジウム・サーモセラムはヘミセルロース糖化物であるキシロース、キシロビオースは代謝出来ないため、グルコースと同様に培地中に蓄積させることができる(図3)1)
  2. セルロースに結合可能なβ-グルコシダーゼを使用することで、BSES法全体をリサイクルすることができるが、非特異的吸着により糖化能低下の場合は少量追加するとよい(図1)2)
  3. 糖蓄積が起こった培養液は、糖液として直接エタノール発酵等へ利用することができる1)

具体的データ

  1. 図1 セルロース高分解菌を利用した生物学的同時酵素生産・糖化(BSES)法
    図1 セルロース高分解菌を利用した生物学的同時酵素生産・糖化(BSES)法
  2. 図2 BSES法によるセルロースからのグルコース生産
    図2 BSES法によるセルロースからのグルコース生産
  3. 図3 BSES法によるアルカリ前処理稲わらからのグルコース・キシロース生産
    図3 BSES法によるアルカリ前処理稲わらからのグルコース・キシロース生産
所属

国際農研生物資源・利用領域

分類

技術A

研究プロジェクト

[アジアバイオマス] 東南アジアバイオマス資源からのバイオ燃料及びバイオマテリアル生産技術開発

プログラム名

農村活性化

予算区分

交付金アジアバイオマス

受託農林水産省・草本を利用したバイオエタノールの低コスト・安定供給技術の開発

研究期間

2014年度(2011~2015年度)

研究担当者
  • 小杉 昭彦 (生物資源・利用領域)
  • Prawitwong Panida (生物資源・利用領域)
  • Waeonukul Rattiya (キングモンクット工科大学ラカバン)
  • Tachaapaikoon Chakrit (キングモンクット工科大学ラカバン)
  • Ratanakhanokchai Khanok (キングモンクット工科大学ラカバン)
  • 発表論文等

    Prawitwong P et al. (2013) Biotechnol Biofuels, 6:184-195. https://doi.org/10.1186/1754-6834-6-184

    小杉昭彦ら 平成23年度国際農林水産業研究成果情報19号13「酵素投入コスト削減のためのセルロース分解酵素リサイクル利用法」

    小杉昭彦ら 「グルコースの生産方法」特許出願番号PCT/JP2013/056511

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