国立研究開発法人 国際農林水産業研究センター | JIRCAS

ハネジナマコの動物性および植物性餌料の特性

要約

ハネジナマコ稚ナマコの動物性餌料の有機物、タンパク質および炭水化物の見かけの消化率および一日あたりの同化量は植物性餌料と比較して高い。

背景・ねらい

東南アジア各地でナマコ類の資源量が乱獲により激減しており、資源増殖や養殖が行われている。また、ナマコを用いた複合養殖技術開発にも関心が集まっている。しかし、高い死亡率や遅い成長が技術的な問題となっている。飼育方法が確立されていないこと、とくに基礎情報である餌に関して不明な点が多いことが大きな原因である。ナマコの種苗生産施設では、海藻粉末や珪藻といった藻類を餌料として用いるのが一般的であり、沿岸域の畜養でも天然の微細藻類が重要な餌と考えられているが、様々な有機物を底質ごと取り込む堆積物食性のナマコにとって何が重要な餌かは確認されていない。本研究は、途上地域で食用として高価な重要種であるハネジナマコの餌料として動物性と植物性原料の消化率および同化量を明らかにして、複合養殖技術開発の基礎情報とするとともに、配合餌料開発に有用な知見を提供することを目指したものである。

成果の内容・特徴

  1. 動物性餌料(エビ粉とイガイ粉)は、植物性餌料(底生珪藻と海藻粉末)と比較して、有機物含量とタンパク質含量が高い。植物性餌料は、動物性餌料と比較して炭水化物含量が高い傾向にある。
  2. ハネジナマコ稚ナマコに動物性と植物性餌料を与えると、有機物の見かけの消化率(ADC、餌と糞の栄養素の量の比較)は、動物性餌料(77.1 – 86.2%)のほうが植物性餌料(32.3 – 55.1%)より有意に高い。タンパク質に関しては、エビ粉、イガイ粉、底生珪藻(75.2 – 88.7%)が海藻粉末(34.4%)よりも高いADCを示す。炭水化物のADCは、タンパク質よりも低く、底生珪藻とイガイ粉(58.3 – 58.5%)がエビ粉と海藻粉末(28.0 – 31.6%)よりも有意に高い(図1)。
  3. 各餌料の1日あたりの摂取量と栄養素含量と見かけの消化率の積として求めた栄養素の同化量(TAN、1日に取り込む栄養素の量)の推定では、有機物およびタンパク質に関してエビ粉が最もTANが多く、炭水化物では珪藻が最も多かった(図2)。現在主たる餌料として使われている珪藻に動物性タンパク質を加えることで、高効率な餌料の開発につながる可能性がある。

成果の活用面・留意点

  1. 珪藻など懸濁物を濾過食する二枚貝の糞や偽糞がハネジナマコの餌として有効であることに加えて、魚粉など動物性タンパク質を多く含む配合餌料を用いる魚類養殖から発生する残餌や糞の餌料価値が高い可能性がある。これらを組み合わせた複合養殖技術開発が期待される。
  2. 珪藻類に動物性タンパク質をサプリメントした餌料の開発で種苗生産や育成の生産性向上が期待できるが、残餌の腐敗による水質悪化には注意が必要である。

具体的データ

  1. 図1 ハネジナマコの餌料の見かけの消化率(Apparent digestibility coefficient, ADC)
    図1 ハネジナマコの餌料の見かけの消化率(Apparent digestibility coefficient, ADC)
    ADCOM(有機物)、ADCprotein(タンパク質)、ADCcarbo(炭水化物)
    SW(海藻粉末)、D(珪藻)、S(エビ粉)、M(イガイ粉)  英文字は有意差を表す。
  2. 図2 ハネジナマコの1日あたりの餌料の同化量(Total assimilated nutrients, TAN)
    図2 ハネジナマコの1日あたりの餌料の同化量(Total assimilated nutrients, TAN)
    TANOM(有機物)、TANprotein(タンパク質)、TANcarbo(炭水化物)
    SW(海藻粉末)、D(珪藻)、S(エビ粉)、M(イガイ粉)
    TANの算出に必要なナマコの1日当たりの餌摂取量は、給餌量と残餌量の差から計算。ナマコの平均体重は10g。 英文字は有意差を表す。
所属

国際農研水産領域

分類

研究B

プログラム名

農村活性化

予算区分

交付金熱帯沿岸域養殖

研究期間

2013年度(2011~2015年度)

研究担当者
  • 渡部 諭史 (水産領域)
  • Orozco Z. G. A. (東南アジア漁業開発センター)
  • Sumbing J. G. (東南アジア漁業開発センター)
  • Lebata-Ramos Ma. J. H. (東南アジア漁業開発センター)
  • 発表論文等

    Orozco, Z. G. A. et al. (2012) Aquaculture Research DOI: 10.1111/are.12058

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