エリアンサス属植物の飼料作物育種素材としての生育特性
エリアンサスは耐湿性が高く、深い層にまで達する根系により乾期の下層土壌水の利用が可能となり、植え付け2年目にはネピアグラスに匹敵する乾物生産能を示し、特に低窒素施肥条件や土壌pHが低い条件で生育が優れる傾向にある。
背景・ねらい
エリアンサス(Erianthus spp)はタイ国内に自生するイネ科植物であり、サトウキビ育種の遺伝資源として注目されている。また乾期でも生育可能なことから、粗飼料としての利用の可能性もある。そこで、生理生態的特性と家畜糞施用条件での乾物生産能力について検討を行い、将来的な利用に向けた基礎的情報とする。
成果の内容・特徴
- エリアンサスは、硬盤層の存在や下層土での湛水条件にもかかわらず強勢な根を発達させ、ネピアグラスより深い根系分布を示す(図1)。湛水条件で生育したエリアンサスの根には、発達した通気組織が観察される(図2)。
- 低位畑作地帯(コラート土壌)における乾期中の土壌pF の上昇は、裸地条件では緩やかであり(図3a)、またエリアンサス群落内でも100cm を超えるような層には乾期末にも圃場容水量(pF2.5)以下の土壌水が存在する(図3b)。
- エリアンサスは初期生育が遅く、植え付け初年目の乾物収量は、現地の一般的な栽培牧草であるネピアグラスを大きく下回るが、2 年目にはネピアグラスに匹敵する最大乾物収量(30t/ha)を示す。特に低窒素条件や土壌pH が低い条件では、ネピアグラスの収量を上回る傾向にある(図4)。
- 家畜糞から放出される窒素は、1 年生のトウモロコシよりも多回収穫される多年生のネピアグラスやエリアンサスで有効に吸収され、家畜糞は酸性土壌での土壌pH の矯正に有効である(図4)。
成果の活用面・留意点
エリアンサスが雨期の過湿と乾期の乾燥という気象条件や、脊薄で酸度の高い土壌条件に優れた適応力を有することが明らかにされ、新飼料作物の作出をねらったサトウキビとの属間交雑育種に活用できる。エリアンサスの飼料化については、葉の鋸歯による収穫作業の困難性や栄養評価等の問題が残されている。
具体的データ
- Affiliation
-
国際農研 生産環境部
- 分類
-
研究
- 予算区分
- 国際プロ〔東北タイ〕
- 研究課題
-
東北タイにおける耕畜結合高度化のための畑作付体系の策定
- 研究期間
-
2001 年度(1999 ~ 2001 年度)
- 研究担当者
-
松尾 和之 ( 生産環境部 )
松本 成夫 ( 生産環境部 )
CHUENPREECHA Taweesak ( コンケン家畜栄養研究開発センター )
- ほか
- 発表論文等
-
(投稿準備中)
- 日本語PDF
-
2001_06_A3_ja.pdf1.35 MB
- English PDF
-
2001_06_A4_en.pdf71.41 KB