バジル類の抗酸化性および総ポリフェノール含量は調理法により変化が異なる
バジル類の抗酸化性及び総ポリフェノール含量は、油炒め調理や蒸し調理により増加する。ゆで調理では、ゆで汁中に成分が溶け出すため、野菜中の抗酸化性および総ポリフェノール含量は減少する。
背景・ねらい
東南アジアでは、バジル類をはじめとして地域ごとに特色ある多様な在来野菜が生産されている。一方、近年の研究により、それらの高い生理機能特性が注目を集めている。これらの在来野菜は、生食されることもあるが、多くは加熱調理を経て食されている。そこで、調理方法による抗酸化性および各種の生理機能性を示すポリフェノールの含量の変化を明らかにすることを目的とした。
成果の内容・特徴
- タイで広く食されている4種のバジル(図1)即ちヘアリーバジル(Ocimum americanum)、ホーリーバジル(O. sanctum)、スイートバジル(O. basilicum)、ワイルドバジル(O. gratissimum)を用いて、5種類の加熱処理(ゆでる、煮る、蒸す、油炒め、高圧釜で加熱)を施し、メタノール抽出物の抗酸化活性(DPPH法)および総ポリフェノール含量(Folin-Ciocalteu法)を測定した。
- 油炒め調理では、全種類のバジルで抗酸化活性、総ポリフェノール含量とも顕著に増加が見られる。蒸し調理でもスイートバジルを除く3種類のバジルで増加が見られる。(図2)
- 4種のバジルの中で、ヘアリーバジルは油炒め調理による効果が最も大きく、抗酸化活性、総ポリフェノール含量とも未処理の試料の2倍以上になる。一方、スイートバジルでは油炒め以外の調理法により抗酸化活性、総ポリフェノール含量とも顕著に減少する。(図2)
- ゆで調理では、ゆで汁中に成分が溶け出し、野菜中の抗酸化性および総ポリフェノール含量が低下する。
- 油炒め調理前後のバジルからメタノール抽出されるポリフェノールの種類は大きくは変化しないが、それぞれの含量が増加する(データ省略)。加熱調理により、メタノール不溶性物質に結合していたポリフェノールが遊離しやすくなるためと考えられる。
成果の活用面・留意点
- ゆで調理により、ゆで汁に抗酸化成分が溶出するが、このゆで汁を用いて炊飯することにより、抗酸化性を付与した加工米飯を製造することができる。(平成22年度国際農林水産成果情報)
- 調理によって新たなポリフェノールが合成されるのではなく、利用される状態に変化したものと考えられる。
具体的データ
- Affiliation
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国際農研 生物資源・利用領域
- 分類
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研究B
- 研究プロジェクト
- プログラム名
- 予算区分
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交付金 » 食料資源利用
- 研究期間
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2010~2012年度
- 研究担当者
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Trakoontivakorn Gassinee ( カセサート大学 )
Tangkanakul Plernchai ( カセサート大学 )
中原 和彦 ( 生物資源・利用領域 )
- ほか
- 発表論文等
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Trakoontivakorn et al.(2012)JARQ 46(4): 347-353
Changes of Antioxidant Capacity and Phenolics in Ocimum Herbs after Various Cooking Methods
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