東北タイ天水田土壌では含水比が20%であると水稲は出芽し、雑草は抑制される

国名
タイ
要約

砂質土壌の多い東北タイ天水田土壌で乾田直播を行う場合、土壌含水比が20%であると水稲カオドマリ-105の出芽には影響を与えずに、カヤツリグサ科雑草の発生を抑制できる。

背景・ねらい

   東北タイでは、持続的な農業生産システムの構築を目的として天水田条件下での水稲品種カオドマリ(Khao Dawk Mali-105)を使った乾田直播の導入が図られているが、雑草の制御が大きな問題となっている。そこで、土壌水分が主要雑草および水稲の発生に及ぼす影響を計量的に解明し、耕種的雑草防除を可能とする好適播種期の策定に資する。

成果の内容・特徴

   東北タイSuwanaphum の天水田土壌(Tungkularonghai Center、砂壌土、水分含有率0.5%以下)300g/ケースに、乾燥稲籾カオドマリを8 粒播種し、水の量を変えて10、15、20、25、30%の土壌含水比区とすると、次のようになる。

  1. 稲は含水比20%以上の土壌では播種4 日後から、15%、10%ではそれぞれ5、6 日後から出芽し、20%以上では25%で最も早く出芽する。播種7 日後には、含水比20%以上では84%以上出芽し、15%、10%の条件と明らかに異なる(図1)。播種6 日後における平均葉齢は含水比25%で最も進んでおり、20%でもこれと同等となり出芽後の生育も早い(表1)。
  2. コゴメガヤツリ(図2)を主体とするカヤツリグサ科雑草は、含水比25%、30%の土壌では播種3 日後から発生し、20%、15%と10%ではそれぞれ5,6 日後から発生する。播種7 日後の雑草発生数は含水比25%、30%での約95 本/ケースに対して、20%では46 本、15%では21 本/ケースと著しく減少する(図3)。
  3. 以上のことから、土壌含水比20%では稲の出芽に影響せずにカヤツリグサ科雑草の発生を抑制できる。

成果の活用面・留意点

  1. 東北タイ天水田地帯での乾田直播播種期での耕種的雑草防除技術の素材となる。
  2. イヌビエなどイネ科雑草の発生の少ない条件で適用する。
  3. 現場への適用には、雨期の開始時期、降雨状況、土壌水分などの予測技術の開発が必要である。

具体的データ

  1.  

    図1
  2.  

    表1
  3.  

    図2
  4.  

    図3
Affiliation

国際農研 生産環境部

農研機構 九州沖縄農業研究センター

予算区分
国際プロ〔東北タイ〕
研究課題

タイ東北部における高収益水田輪作システムの開発

研究期間

2001 年度(1998 ~ 2001 年度)

研究担当者

森田 弘彦 ( 農業研究センター )

椛木 信幸 ( 生産環境部 )

ほか
発表論文等

森田弘彦, 椛木信幸. (2001): 東北タイ天水田の雑草発生に及ぼす土壌水分の影響, 第40回日本雑草学会講演会, 2001 年4 月.

日本語PDF

2001_11_A3_ja.pdf811.99 KB

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