ブラジルの大豆関連産業を中心とした産業連関分析
1995年ブラジル産業連関表を基に、産業連関分析手法を用いて、ブラジル大豆関連産業の経済的地位が大きいこと、大豆製品の輸出需要が国内経済に及ぼす付加価値(GDP)誘発額が大豆のそれより大きいこと等を計量的に示した。
背景・ねらい
ブラジルの大豆関連産業について、産業連関分析手法を用いて、これら関連産業の経済的地位と大豆製品等の輸出需要の経済的影響を計量的に明らかにする。
成果の内容・特徴
1995年ブラジル産業連関表を、分析目的に合わせるため、一定の数学モデルを前提に農業及び関連産業を中心とした内生71部門から成るA表に組み替え、以下の 分析を行った。
- 大豆関連産業の経済的地位
1995年における大豆(穀実)の輸出需要は706百万レアルであったが、これが直接的、間接的に誘発する付加価値額(GDP)は583百万レアルと試算される。また、1995年における大豆油及びかすの輸出実績は2,802百万レアルであったが、この輸出需要が誘発するGDPは2,128百万レアルと試算される(表1)。このように大豆製品の輸出需要は生産誘発を通じて国内の幅広い産業に付加価値の発生をもたらし、所得と雇用の形成に貢献している。 - 大豆輸出振興策の評価
今後の大豆輸出振興策を評価するため、新たに100万トン相当の大豆を、(1)穀実として輸出、(2)加工して大豆製品として輸出する2つの政策シナリオを設定し、原料農産物としての輸出と加工農産物としての輸出を経済的側面から比較検討した(表2、図1)。ケース1:新たに1O0万トンの大豆を加工せず穀実として輸出(金額換算で202百万レアルの輸出に相当)すると仮定すると、産業全体で167百万レアルのGDPが誘発され、大豆生産部門以外への生産波及は一部の産業を除いて比較的軽微である。ケース2:新たに100万トンの大豆を国内で搾油し、製品である大豆油及びかすとして付加価値を付けて輸出(金額換算で373百万レアルの輸出に相当)すると仮定すると、ケース1に比べて約7割増の283百万レアルのGDPが誘発され、国内経済への波及効果は大豆生産部門に限らず、搾油産業、一般製造業、サービス業などにも幅広く及ぶ。以上の結果より、大豆生産部門、搾油部門における生産性向上はもとより、流通インフラの整備、非効率な流通部門の合理化を図ることによって、輸出競争力の強化、国内の所得形成に結び付けていくことが農業政策上、重要な課題となっている。
成果の活用面・留意点
今後、データの一層の精緻化、関連情報の追加的収集を図ることによって、マクロ経済との関連においてブラジル農業政策の経済的評価が可能となる。
具体的データ
- Affiliation
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農業研究センター
- 分類
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行政
- 予算区分
- 国際農業(農牧輪換)
- 研究課題
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ブラジル国内の農業生産計画支援システム策定のための調査研究
- 研究期間
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平成10年度(平成8~11年度)
- 研究担当者
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尾関 秀樹 ( 企画調整部 )
- ほか
- 発表論文等
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尾関秀樹・須貝吉彦.「ブラジル経済と大豆輸出の波及効果に関する経済連関分析」 産業連関, Vol8, No.4, 1999年3月.
- 日本語PDF
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1998_04_A3_ja.pdf627.85 KB