ニューラルネットワークを用いた植生変動評価手法の開発

要約

オーストラリア中央部に位置するKunoth Paddockを対象地域とし、土壌・水系・植生・地貌・傾斜・水飲み場からの距離・丘陵地からの距離の7要因から、植生の多寡と変動の程度を推定する2種類のニューラルネットワークモデルを開発した。さらに、両評価結果を統合した植生変動評価図を作成した。

背景・ねらい

   砂漠化の進行地域においては、植生の損失とともに、土壌の崩壊や劣化等の土地荒廃を生じる場合が多く、気候的な要因に加えて、地形や土地利用が密接に関与している。アフリカ、アジア、オーストラリア等、各地で深刻な問題となっている砂漠化を防止するには、その実態を的確に把握し、環境管理研究に貢献するデータの提供が急務となっている。
   本研究は、リモートセンシングデータおよび各種地図情報を解析し、砂漠化地域における植生変動の実態を定量的に評価するための手法開発を目的とする。

成果の内容・特徴

  1. オーストラリア中央部に位置するKunoth Paddockを対象地域とし、CSIROが提案した植生指数PD54を用いて、1988年2月・6月、1994年12月、1995年3月のLANDSAT/TMデータから、恒常的な植生指数の多寡と変動の程度を表す主題図を作成した(図1・図2)。
  2. 対象地域の土壌・水系・植生・地貌・傾斜・水飲み場からの距離・稜線からの距離の7要因から、前述のPD54の多寡と変動の程度を推定する2種類のニューラルネットワークモデルを開発した。
  3. ニューラルネットワークモデルの構造を決定するため、中間層のユニット数および学習用パラメータの初期値を変えながら行った試行の結果、両モデルとも中間層に8ユニットを有する構造が、教師データに対してもっとも良く適合した。この場合の信頼精度(教師データに対する判別精度)は、両モデルとも74.5%であった。
  4. PD54の多寡と変動の程度を推定する2種類のニューラルネットワークモデルに基づいて地図演算を行った後、クロス画像を作成することによって、両評価結果を統合した植生変動評価図を作成した(図3)。これによると、対象地の西部は永年生の植生が成立しやすい環境条件にあるが、東部は変動を生じやすい環境条件にあると評価されており、現地調査の知見に一致する結果であった。
  5. 作成したモデルにおける要因の重要度を調べるため、それぞれの要因を除いた場合の判別精度を求めた結果、両モデルとも「水飲み場からの距離」および「土壌」要因の寄与が高く(表1)、モデルの精度を維持する上で、これらが重要な因子であることが示された。

成果の活用面・留意点

   衛星データおよび各種地理情報から植生の変動を推定・評価する手法として利用できる。
   ニューラルネットワークは、教師データの入力層と出力層の値を合目的的に対応づけるパラメータによって形成されるため、他地域において本手法を適用する場合は、当該地域の教師データによる学習を要する。

具体的データ

  1.  

    図1 植生指数PD54に基づく植生の多寡程度
  2. 図2 植生指数PD54に基づく植生の変動程度
  3. 図3 ニューラルネットワークモデルによる植生変動評価
  4. 表1 各要因を除いた場合の判別精度の変化
所属

国際農研 環境資源部

草地試験場

分類

研究

国名

オーストラリア

予算区分
科・総合研究〔砂漠化〕
研究課題

地球科学技術研究のための基礎的データセット作成研究

研究期間

平成9年度(平成6~9年)

研究担当者

山本 由紀代 ( 畜産草地部 )

内田 ( 環境資源部 )

大野 宏之 ( 環境資源部 )

渡辺 ( 環境資源部 )

ほか
発表論文等

山本由紀代, 大野宏之, 渡邉 武, 須山哲男, 佐々木寛幸, 小路 敦 (1997) 砂漠化に伴う土地荒廃現況評価手法の開発1・対象地域の概況と解析方法.日草誌, 43(別), 404-405.

日本語PDF

1997_07_A3_ja.pdf1.37 MB