リモートセンシングデータを用いた土壌侵食現象の解析手法の開発
衛生リモートセンシングデータを用いて,植生活動の時間的変化から広域を対象とした地域分類を行う手法及び地表面の地形・被覆の状態から土壌侵食の顕著な地域の土地劣化現象を解析する手法を検討し,有効な算定アルゴリズムを示すことができた。
背景・ねらい
パキスタン・パンジャブ州北部には,土壌侵食・土地劣化の顕著な天水農業地域が存在している。こうした土地の性状は時間とともに変化するが,その実態を把握する手段としてリモートセンシングデータを活用することが期待される。本研究では,衛生データから地表面の空間的特徴及びバンド間演算によって得られる指標値の分布を解析し,広域の土地劣化現象との関係について調べることとした。
成果の内容・特徴
- NOAA/AVHRRデータから全球規模で作成されているGVI(グローバル植生指数)データはパキスタン全土レベルの土地利用分類及び地域毎の植生活動の時系列解析に有効であることが確認された。パキスタンにおけるラビー,カリーフの2作期に対応して,農地では年2回の植生活動の極大期が存在するが,農地以外ではこうした特徴的な変化は見られない。また,天水農地では灌漑農地に比べて降水量の変動に対してGVI値が敏感である点が明瞭に示された(図1,図2)。
- SPOT/HRVパンクロマティックデータ(分離能10m)の空間解析により,土壌侵食による開析の進んだ谷の存在する範囲の抽出が可能であることが確認された。侵食域では,数10m以下のスケールかつ特定の方向性を持たない濃淡のパターンが画像上で見られるために,適当な空間フィルターを適用することにより,他の地域との識別が可能となった。但し,人工物によるパターンとの混同も見られ,精度の向上のためには手法の改良を要することが指摘された(図3)。
- LANDSAT/TMデータのバンド間演算により求められる指標値の中で,バンド2(緑色域)とバンド3(赤色域)から得られる地表面の被覆の程度を表す指標値が,侵食の進行度と関わりがあることを見出した。
成果の活用面・留意点
DVIデータは空間の代表性の点から,詳細な地域分類には適さない面があり,目的に応じて高分解能のリモートセンシングデータの利用を検討する必要がある。また,土地劣化現象には様々な要素が含まれるが,手法の適用に際し,こうした類型区分を考慮することが重要である。
具体的データ
- Affiliation
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国際農研 環境資源部
- 分類
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研究
- 予算区分
- 国際農業(環境資源)プロ 経常
- 研究課題
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熱帯耕地の侵食・劣化動態と対策技術の開発
- 研究期間
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1994年度(1992~1994年度)
- 研究担当者
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内田 諭 ( 環境資源部 )
- ほか
- 発表論文等
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Uchida, S. et. al. (1994) Land Degradation Analysis of Rainfed Agricultural Area in Pakistan Using Remote Sensing Data, Proc.15th Asian Conf. Remote Sens., Vol. I, C-4.
- 日本語PDF
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1994_04_A3_ja.pdf1.18 MB