新種の実験動物としての世界最小反すう動物マメジカの室内繁殖
マメジカ(Lesser mouse deer、Tragulus javanicus)の室内繁殖はこれまで色々な所で試みられてきたが、成功していない。我々は実験動物用小型ケージの使用、取扱い、飼料などを注意することによって訓化・繁殖することに成功した。マメジカの実験動物としての有用性が明らかになった。
背景・ねらい
獣医・畜産分野において、草食性の反すう家畜の研究はきわめて重要であるにもかかわらず、この様な目的に適した小型の草食性動物の実験動物化の為の室内繁殖は全く行われていないのが現状である。そこで、マレイシアに生息する世界最小(成獣で1.2ー1.7kg)反すう動物のマメジカの実験動物化の為の室内繁殖を試みた。この様な試みは 「生きた化石」と言われるこの野生動物の保護にもつながると考えられる。反すう家畜のための実験動物としての有用性を始め、繁殖、生物学的性状などを検索した。
成果の内容・特徴
- マメジカの生物学的特性として、犬・猫・兎に近い行動、血液凝固が極めて早い、麻酔薬に対する抵抗性が高い、ルーメン内単一/無プロトゾア相の自然発生、高活性のルーメン内繊維分解菌、室内飼育による肥満・糖尿の皆無等が明かになった(表1)。
- マメジカは神経質で室内繁殖は困難であるとされてきたが、小型ケージ(高さ46cm、横58.4cm、縦60cm)で、草食動物用ペレットを主体とし、サツマイモ・人参等を手から直接給与することによって、野生動物とは思えない程良く訓化・繁殖すること(表2)が判明した。
- マメジカのルーメンより、新種のプロトゾア、イソトリカ、ジャラルデニイが検出された。反すう家畜では通常見られないきわめて大型の、オヴァール、オスシロスピラ様細菌が常在することが明らかになった。
- 当飼育のマメジカの一系統に、体色の変異したものが出現した。
成果の活用面・留意点
マメジカは草食性反すう家畜のための実験動物はもとより、人類の疾病モデルとしても使用できる可能性がある。
具体的データ
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表1 マメジカの生物学的特性
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表2 マメジカの繁殖学的特性
- Affiliation
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国際農研 畜産草地部
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家畜衛生試験場
- 分類
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研究
- 予算区分
- 国際プロ[反すう機能]
- 研究課題
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熱帯反すう家畜の特異的消化機能の解明と利用
- 研究期間
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1988~1993年度
- 研究担当者
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工藤 博 ( 畜産草地部 )
- ほか
- 発表論文等
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Kudo, H. et. al. (1993) Reproductive performance of captive lesser mouse deer (Tragulus javanicus) in the laboratory of UPM. Malaysian Soc. Anim. Conf., June 8-9, Pulau Langkwai, Maklaysia, Proceeding: 169-170.
- 日本語PDF
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