主要普及成果

小型で安価なマイコンとCO2センサーを用いた簡易光合成測定装置

関連プロジェクト
熱帯作物資源
国名
日本
要約
光合成は植物の生育の最も基本的なプロセスであり、個葉の光合成速度は植物科学の多くの場面で活用される生育指標である。一方で、一般に用いられる光合成測定装置は、高精度な測定システムを備えるため、大型で高価となり、導入のハードルが高い。開発した光合成測定装置は、マイクロコンピューター(マイコン)で制御する二酸化炭素(CO2)センサー系と、アクリル製の同化箱(葉を封入する箱)から構成される。小型かつ安価で自作可能な本測定装置は、CO2吸収量に基づく光合成速度の測定において、市販標準機と同等の精度を示す。

背景・ねらい

 葉の光合成速度は植物科学分野の多くの場面で活用される生育評価指標である。同化箱法はその測定法の一つであり、約40年前に市販の携帯型測定装置が販売された。現在、それらの後継機は測定精度・速度が優れる等のメリットがあるため主流である。一方で、高価(数百万~1千万円超、社会情勢や為替変動の影響を受けさらに高騰)であることが光合成測定を幅広いユーザー(研究者、生産者、教育関係者等)による利用を阻む一番の懸念事項である。近年は、小型で安価な環境センサー類が多く普及しており、マイクロコンピューター(マイコン)等のIoTデバイスに組み込んだ温室環境計測・制御システム等、農業分野での利用・普及も著しい。これらを光合成測定システムの構築に応用する。
 安価なCO2センサーを自作した同化箱に組み込んで小型マイコンで制御・記録する閉鎖型光合成測定システム(以下、デモ機)を試作する。試作したデモ機を国際農研 熱帯・島嶼研究拠点の温湿度制御室内および野外圃場にて世界的な市販標準機と比較し、測定性能を評価する。

成果の内容・特徴

  1. 自作したデモ機は、マイコンにより各センサーを制御する測定系と、葉を封入する同化箱から構成される。同化箱はアクリルガラス、ゴムマット等で自作される。同化箱内にはCO2センサー、ファン、熱電対が設置され(図1a)、これらを箱外部のマイコン(M5Stack)に接続し制御する(図1b)。
  2. デモ機は、約3万円の材料費で安価に自作可能である。
  3. サトウキビの葉を用いてデモ機の測定性能を標準機と比較したところ、温湿度制御室で人工光源を用いて光量を変動させた場合(図2a)、野外の自然光下で多品種を測定した場合(図2b)のいずれにおいても測定値間の有意な相関関係が認められる。
  4. デモ機の光合成速度測定値を目的変数、標準機の測定値を説明変数とした単回帰式の回帰精度を表す二乗平均平方根誤差(RMSE)、相対二乗平均平方根誤差(RRMSE)は多品種を扱った屋外のデータで温湿度制御下に比べ高いものの、いずれの条件においても十分に値が低く、デモ機の測定精度が高いことを示す。

成果の活用面・留意点

  1. 光合成測定が安価かつ容易になることで、予算に制限のある多くの研究者にとって光合成研究が身近なものとなり、関連する分野の研究が活発化される。
  2. 本成果は標準機と同等の性能を保証するものではなく、デモ機と標準機は用途によって使い分けることが望ましい。
  3. デモ機作成に用いた工具類、人件費、ノートパソコン費は材料費に含まれていない。
  4. 測定系のプログラミングコードはソフトウェアの更新に伴い改定の必要が生じることがある。
  5. 安価なCO2センサーは、性能や耐久性にバラツキがある可能性も考えられるため、大気CO2条件や既知のCO2濃度条件下で適宜性能を確認する必要がある。
  6. 遺伝資源や雑種集団などの多検体評価(高効率フェノタイピング)に応用するためには、データ記録システムの改良(例、有線から無線)、測定システムの改良(例、閉鎖型から開放型)が必要である。

具体的データ

分類

研究

研究プロジェクト
プログラム名

情報

予算区分

交付金 » 第5期 » 情報プログラム » 熱帯作物資源

交付金 » 第5期 » 理事長インセンティブ

研究期間

2022~2023年度

研究担当者

寳川 拓生 ( 熱帯・島嶼研究拠点 )

科研費研究者番号: 70851260

朝生 ( 琉球大学 )

光岡 宗司 ( 琉球大学 )

科研費研究者番号: 60437770

平良 英三 ( 琉球大学 )

科研費研究者番号: 20433097

川満 芳信 ( 琉球大学 )

科研費研究者番号: 20192552

ほか
発表論文等

Takaragawa et al. (2025) Photosynthesis Research 163: 52
https://doi.org/10.1007/s11120-025-01170-5

日本語PDF

2025_C01_ja.pdf693.16 KB

※ 研究担当者の所属は、研究実施当時のものです。

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