限られた水資源を利活用した乾期野菜栽培促進のためのマニュアル
ニジェール国において限られた水資源を利活用し乾期の野菜栽培を促進する手法を、実証調査の結果に基づき、組織化、家畜の食害対策、栽培技術の改善の分野から、農業省調査計画局と協力し、取りまとめたマニュアルである。
背景・ねらい
サハラ砂漠南端の乾燥・半乾燥地域に位置するニジェール国においては、国際河川であるニジェール河および季節河川あるいは沼の水資源があるにも関わらず、それらが十分に活用されていない。ニジェール国水利・環境省発行の水資源開発マスタープラン報告書(1999)によると、「ニジェール国には1,000以上の沼が存在し、うち175が永久沼として国内に点在しているといわれているにも関わらず、これらの沼が水利用調査の対象となることは、これまでほとんどなかった。」と記載されており、具体的な方針も示されていない。
一方、ニジェール国の自然沼の水利用目的には、大きく、農業利用、家畜飲料利用、生活利用(飲料含む)に分けられる。これらの中で、現在、十分に利用が進んでおらず、かつ今後の利用量増が見込まれるものは、乾期野菜栽培による農業利用である。このことから、限られた水資源を利活用して乾期野菜栽培を促進するための手法の開発と普及が求められている。
成果の内容・特徴
- 37村の農民に対するアンケート調査を行い、乾期野菜栽培を促進するうえでの制約要因を明確にした。
- アンケート調査から明らかになった3大制約要因(a.家畜の食害が甚大、b.農業用資機材が入手困難、c..病虫害の発生)と、調査団による調査結果から明らかとなった2つの課題(a.育苗技術の低さ、b.組織的な取組が不十分)に対する対策(a.水資源利用者組織化の支援、b.簡易な農地整備支援活動、c.営農技術の改善手法)を対象サイトにおいて実証した(図1参照)。
- 本マニュアルは、十分に利活用されていない自然沼周辺を対象サイトとして実施した実証調査の結果を中心に取りまとめたものである。このマニュアルの内容は、自然沼ばかりでなくダムや遊水池及び井戸を水源としたサイトでも適用可能である(図2参照)。
- 本マニュアルの取りまとめに際しては、ニジェール国農業省の関係部局で構成される技術委員会で内容を協議しながら編集すると共に、当国の普及員が理解できる仏語とすべく査読を繰り返した上で、農業省調査計画局の承認を得るなど、現地での利活用度の向上に配慮している。
成果の活用面・留意点
- このマニュアルの利用者は、乾期の野菜栽培を促進するために、農家を支援・指導する立場にある者(普及員及びNGO・国際機関等のプロジェクトで雇用された農民への指導者)を想定している。
- 自然沼の水資源を活用し、乾期の野菜栽培を促進するためには、最低限、このマニュアルに記載した項目を実施することが必要と考えている。しかしながら、サイトによっては、既に実施済みである項目、あるいはこのマニュアルで記載した項目だけでは不十分な項目もあると思われることから、実際のサイトの現状に応じ、適宜応用しながら使用することが必要である。
- 合計500部を製本したマニュアル仏語版は広報セミナーに参加した野菜栽培分野で支援している関係機関およびニジェール国農業省によって地方出先機関に配布されている。
具体的データ
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- 水資源利用者組織化の支援(写真左)-組合役員の選出に当たっては、複数の候補者の中から誰が誰に投票したかが分からない無記名秘密投票方針を採用した。
- 簡易な農地整備支援活動(写真中央)-住民との合意形成に基づき、設計から施工までオンザジョブトレーニングにより食害防止柵を設置した。
- 営農技術の改善手法(写真右)-育苗技術の改善・病害虫防除・かん水技術などを総合化し、野菜栽培研修を実施した。
- Affiliation
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国際農研 農村開発領域
- 分類
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行政A
- 研究プロジェクト
- プログラム名
- 予算区分
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交付金 » アフリカサバンナ農業
- 研究期間
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2011年度(2007~2011年度)
- 研究担当者
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大須賀 公郎 ( 農村開発領域 )
團 晴行 ( 農村開発領域 )
見える化ID: 001800保久 丈太郎 ( 農村開発領域 )
篠原 統吾 ( 農村開発領域 )
Charles Marie-Line ( 農村開発領域 )
河野 尚由 ( 農村開発領域 )
大前 英 ( 熱帯・島嶼研究拠点 )
見える化ID: 001794 - ほか
- 発表論文等
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Manuel pour la promotion du maraîchage en saison sèche en utilisant les ressources en eau des mares naturelles, 2011.10.(ニジェール国農業省調査計画局の承認を得て発刊。JIRCASのHPに同マニュアルの仏語を掲載予定。)
大須賀公郎他、ニジェール国における乾期野菜栽培の制約要因とその対策の策定、日本沙漠学会 2011年第22回学術大会 講演要旨集、pp.6-7.
- 日本語PDF
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2011_01_A4_ja.pdf94.75 KB
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2011_01_A4_en.pdf265.14 KB