農牧輪換システムの導入により大豆と小麦の生産性が改善する
南米の熱帯サバンナ地域において、連作により生産性の低下した大豆-小麦体系の畑に農牧輪換システムを導入すると、土壌の理化学性とともに大豆と小麦の生産性も改善する。
背景・ねらい
南米の熱帯サバンナ地域では1980年代に行われたセラード開発以降、広大な面積の農地が開発された。しかしながら、これらの農地では長年の連作により生産量の低下と土壌理化学性の悪化が問題となっている。この問題の解決法として農牧輪換システムの導入があるが、その生産性低下に対する改善効果について、定量的な解明は遅れている。そこで、パラグアイのCETAPAR-JICAにある大豆-小麦体系の連作畑を7年間ギニアグラス草地に転換した圃場を耕地へ再転換した(図1)。この圃場(輪換畑)と連作畑の4年間の収量を全量測定し、草地と連作畑の土壌を採取・分析することで大豆-小麦の生産性と土壌の理化学性の改善効果を定量的に明らかにする。
成果の内容・特徴
- 収量の年次変動は旱魃等のため大きいが、大豆、小麦とも輪換畑の方が連作畑より高い(図2、3)。連作が問題となる以前のこの地域における大豆の最高収量が約3トン/haであったことから,輪換による大豆収量の改善効果は高いといえる。
- これらの改善効果は4年程度継続する(図4)。
- 連作畑では不耕起栽培のため地表面にリン等の養分が蓄積し、根の地表面への集中により旱魃への耐性が低下する等の悪影響が問題になっているが、農牧輪換システムの導入によりリンやカリウムの浅い土層への蓄積は解消される(表1)。加えて、ギニアグラスのリターや根の伸張により土壌有機物の蓄積が進むと共に団粒構造も発達する。
- 以上のことから、大豆-小麦体系の連作畑に農牧輪換システムを導入すると、土壌の理化学性が改善されるとともに大豆と小麦の生産性も改善する。
成果の活用面・留意点
- 試験はパラグアイで行われたが、ブラジルのセラード地帯を中心とした熱帯サバンナ地域でも活用出来る。
- 輪換効果は4年程度で消失するため再度草地化する必要がある。
具体的データ
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輪換区(計3ha。2003年11月初旬に再転換):連作区(計2.1ha) -
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表1.農牧輪換区と連作区における土壌の理化学性の違い
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- Affiliation
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国際農研 畜産草地領域
- 予算区分
- 交付金〔熱帯畜産〕
- 研究課題
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農牧輪換システムにおける大豆の生産性向上効果の解明および草地管理技術の開発
- 研究期間
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(2004~)2006~2008年度
- 研究担当者
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下田 勝久 ( 畜産草地領域 )
堀田 利幸 ( Nikkei-CETAPAR )
干場 健 ( Nikkei-CETAPAR )
- ほか
- 発表論文等
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Shimoda, K. et al. (2009) Evaluation of an Agropastoral System Introduced into Soybean Fields in Paraguay: Positive Effects on Soybean and Wheat Production. JARQ
Shimoda, K. et al. (2007) Evaluation of effects of an agro-pastoral system on soybean production and soil properties. JIRCAS Working Report 51, 67-71.
- 日本語PDF
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2008_seikajouhou_A4_ja_Part17.pdf506.75 KB